“強い”という表現は、いかなるスポーツにおいても至上の称賛であるはずだ。デビュー2戦目、最高峰の舞台でそんな言葉を勝ち取ってしまったスポーツ選手は多くはない。
トヨタがF1撤退を発表する直前、11月1日のアブダビGP。'09年最後のレースで小林可夢偉が6位入賞を果たした瞬間には、百戦錬磨のジャーナリストたちも拍手を贈った。天性の速さと賢明な攻撃性、ライバルと並んでコーナーに進入していくときの威厳。すべてを集約して、各国のテレビは「強いコバヤシ」を連呼していた。
ブラジルGP9位でも、可夢偉は「遅い」とつぶやいた。
'08年以来、GP2選手権を戦いながらトヨタF1の控えドライバーを務めてきた小林がチャンスを手にしたのは第16戦ブラジルGP。日本GPで負傷したティモ・グロックに代わって初めてのレースに挑むことになった。雨の予選11位。決勝レースでは9位。タイトルを決めたジェンソン・バトンと互角の勝負を展開し、ブラジルの地元紙では「チャンピオンに輝いたバトン、勝利したマーク・ウェバーと同様にすばらしい」と大きく報道され、英国のウェブサイトではファン投票によってベストドライバーに選ばれた。
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photograph by Mamoru Atsuta