獅子の遺伝子BACK NUMBER
ドラフト会見待機も名前呼ばれず「静まり返る部屋、無言で解散に…」西武の29歳捕手が振り返る2度の指名漏れ「もう野球やめよう」どん底からの大逆転秘話
text by

市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byNumberWeb
posted2026/10/22 17:00
2度の指名漏れがその後のプロ入りへ大きな糧となった
目の前の試合に勝つことを目標に練習に励み、企業のため、応援してくれる社員のために一生懸命に取り組もう。柘植にとっては初めて味わう感情だった。
「それまでの自分は本当に自分のためだけに野球をしていました。でも、そんな姿勢はチームに迷惑をかけていたのだなと痛感しましたね。ドラフトでの指名漏れは『チームに貢献できるように頑張ろう』という気持ちが芽生えたきっかけだったと思います」
奇しくもその思いが柘植に再びプロ入りのチャンスを運んでくることとなった。
「プロへ行く道は色々ある、と伝えたい」
ADVERTISEMENT
2019年ドラフト会議、柘植はライオンズから5位で指名を受けることとなる。
「おそらく高卒でプロ入りしていたら、社会人時代、先輩たちから教えてもらったさまざまな大切なことを知るチャンスはなかったかもしれません。社会人野球を経験できてよかったと心から思います。同様に3年目で指名されていたら、その翌年に感じた『自分以外の人のためにプレーする』という心境も間違いなく味わえませんでしたから」
社会人4年目の、ドラフトにかかるまでの間に「反対方向に打つ」という技術を習得できたことも大きかったと柘植は振り返る。そのおかげで打率は向上し、スカウトの目に留まった。
今年もドラフト会議の季節が訪れる。
「高校卒業時と社会人3年目と2度の機会があり、社会人のときはプロ入りを諦めそうになりましたが、諦めずに続けたことで3度目の機会でプロ野球に挑戦することができました。今年、指名を待っている選手には、たとえ今年指名されなくても、プロへ行く道は色々ある、と伝えたいですね。僕はそのおかげでチームのため、応援してくれる誰かのためなど、違う目線で野球をがんばる目標もできましたから」
たとえ遠回りになっても、その道のりに意味はある。柘植の野球人生は、それを示している。

