- #1
- #2
プロ野球PRESSBACK NUMBER
理系の秀才がなぜ“ドラフト会議の司会者”に?「台本読むだけなら、よそでやれ」ドラフト名物アナの下積み時代…あの声の原点はディズニーランドだった
posted2026/10/22 11:06
数々のドラマを生み出してきたドラフト会議。聞き慣れた“あの声”の主は…
text by

谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph by
Yuki Suenaga
◆◆◆
「第1巡選択希望選手――」
グランドプリンスホテル新高輪の会場に、今年もあの低く澄んだ声が響く。
ADVERTISEMENT
フリーアナウンサー、関野浩之がプロ野球ドラフト会議の司会を務めて、今年で18回目の秋を迎える。
本指名と育成指名を合わせ、これまでに呼び上げた名前は延べ1788人を数える。会場がどれだけ沸いても、どれだけ大きなため息に包まれても、その声はいつも同じ温度で選手の名前を告げてきた。
完璧な仕事ぶりに見えるが、本人はあっさりとこう言う。
「間違えたこと? ありますよ。最初の頃に1球団飛ばしちゃったこともあるし、中日の番なのに『オリックス』って言っちゃったこともある。6、7年前には、楽天の指名がまだ残っているのに『以上で全ての選択が終了しました』って締めようとしちゃって。会場がぽかんとしているから、あれ?って。大変失礼しました、楽天お願いします、と(笑)」
ミスがあっても、頭から言い直せばいい。初登板となった2009年以降、NPBから伝えられる注意事項はそれだけ。読み方の指示は、一度も受けたことがないという。それでも関野は、淡々と、厳かに名前を読む。そこには自分で決めた理由がある。
「夢を叶えた選手やご家族は、きっとあの瞬間を何度も思い出したり、見返したりすると思うんです。そのときに、僕の声が邪魔になってはいけない。きれいにあの瞬間に戻れる、思い出の中の声でいようと。祝福とリスペクト。それが僕の答えなんです」
その答えにたどり着くまでには、長い遠回りがあった。

