甲子園の風BACK NUMBER
ドラフト戦線に異変…有望高校生がメジャーでもプロ野球でもなく“浜松の社会人チーム”に進んでいた「まるでプロの環境」「スカウトうまい」ヤマハの謎を追う
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井上幸太Kota Inoue
photograph byKota Inoue
posted2026/10/21 11:00
今春、社会人野球・ヤマハに進んだ芹澤大地
2023年12月から監督に就き、就任2年で日本選手権優勝のタイトルをもたらした申原直樹に施設への率直な感想を伝えると、相好を崩した。
「本当ですか。もっと高校生や大学生に知られてほしいんですよねえ」
監督は“元総務部”…ヤマハの転機
申原は報徳学園で甲子園出場、中央大では1学年先輩の阿部慎之助(元巨人)とプレー。その後、ヤマハで5年現役を続けた。“野球エリート”と呼ぶにふさわしい経歴の持ち主だが、とっつきにくさを感じさせない、人当たりの柔らかさがある。それは、現役引退後に野球部を離れ、10年以上社業に従事した経験がもたらす部分もあるだろう。
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現在の充実した施設の誕生に一役買ったのが、人事部を経て、本社の総務部に所属していた申原の一言だった。当時の直属の上司である総務部長との雑談で、「どうやったら野球部が強くなるのか」と問われ、「いい選手が入ってくることと、練習設備が整うことじゃないですかね」と返答したことがきっかけだった。
「施設が整って、『ここで野球をやりたい』という学生がいればいいなっていうのと、今いる選手たちが『自分たちのために会社が環境を整えてくれた』と思える。自分たちにお金をかけてくれたと思えたら、『会社のために』と、自然と頑張るので。仕事でも、職場環境がよくなれば社員は前向きに働くようになる。総務部で仕事をして、それを感じていました」
ちょうどグラウンドの天然芝の傷みが目立ち始めるなど、設備の更新を考える時期に差し掛かっていたのも幸運だった。会社は外野の芝生を人工芝に張り替え、スタッフルームや応接室などのバックヤードを整えるなど、環境整備に着手。それと同時に総務部長から「じゃあ、お前がスカウトになって選手を採ってこい」と命ぜられた。
スカウト設置は3年前…苦悩
ヤマハ野球部に明確な役職として「スカウト」が設置されたのは2023年。意外にも最近のことで、それまでは、監督を中心にスタッフが可能な範囲で視察や情報収集にあたっていた。つまり、申原が“初代スカウト”になる。
総務部から久々に野球部に復帰し、専任のスカウトとなったことで、好選手を目にする機会は各段に増えた。だが、発見イコール獲得となるほど甘くはない。申原が地方チーム特有の“壁”を明かす。

