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《車いすテニス生涯グランドスラム》上地結衣32歳が語る“終わらない探求”とは?「どうなるかわからなくても、いったんやってみる」
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto
posted2026/10/22 11:01
32歳にして生涯グランドスラムを達成した上地。4大大会のシングルス通算勝利は12を数える
「今年、勝ってあらためて感じたのは、芝では自分のテニスが少し違う形になるということです。考えて組み立てるよりも、どんな体勢でも最後まで打ち続けられるかがすべてになります。一瞬でも迷えば、それが命取りになる。状況が悪くても、ミスが増えても、とにかく打ち続ける。ウィンブルドンでは、その一点だけを心に置いてプレーしました。自分が楽しむプレーと、勝つための戦術は、やはり別物だと感じましたね」
特筆すべきは、彼女が下したスライスの判断だ。昨年は練習を重ねながらも、勝負どころで使う勇気を持てず、それを悔いた。だが今年の決勝では躊躇を捨てた。宿敵ディーデ・デフロート(オランダ)をわずか48分で退けた圧勝は、理想にとらわれず、その場で最善の一手を選び抜いた結果。冷静な合理性が勝利を呼び込んだのだ。
上地を進化させたライバルの存在
上地のキャリアはデフロートの存在なしには語れない。対戦回数は実に70戦以上にも及ぶ。その中では、28連敗という苦い経験も味わった。普通の選手であれば心が折れてしまってもおかしくない状況だが、上地は一度も歩みを止めなかった。支えになったのは、彼女の内側にある、負けを決して受け入れない強い心だった。
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「小さい頃から家族でトランプやゲームをしても、負けたまま終わることができない性格だったんです。家族は私が勝つまで付き合わされる(笑)。それくらいテニスでも、負けたまま終わるのがとにかく嫌ですね」
その気質は、2021年の東京パラリンピックでも揺らぐことはなかった。
自国開催という重圧の中で銀メダルに終わり、彼女は「今の延長線上では、これ以上のパフォーマンスは出せない」と限界を悟る。そこからパリまでの3年間、ベテランとしては異例ともいえる、自らのスタイルを一度壊すという大胆な選択をした。

