甲子園の風BACK NUMBER
「自転車操業で、寄付金集めに奔走」名門・池田高校も苦しんだ“部活動とカネ”…なぜ甲子園出場に大金がかかるのか? 蔦文也監督と「甲子園払い」の実態
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谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph bySankei Shimbun
posted2026/09/11 17:40
甲子園で選手たちをねぎらう池田高校の蔦文也監督
中村 おそらく、そうだと思います。甲子園中継では特にスタンドをよく映すんですよね。プロ野球ならファウルボールが飛んだときに一瞬映る程度ですが、NHKの高校野球中継は必ずアルプススタンドの応援団長や、誰かのお母さんを映す。だから、応援に力が入っていないと見栄えが悪く、応援されていない感じが出てしまうと考えて、「埋めなきゃ」という意識が働く。それが結果的に多額の寄付金を必要とする一因になっていると思います。
田中 もともとあった文化ではなくて、途中でいつの間にか当たり前になっていったものなんですね。
中村 NHKで高校野球が全試合全国放送されるようになった1975年頃を契機に、「必ず映るから必ず埋めなきゃ」という感覚が定着していったんだと思います。
現在も続く「部活動とカネ」の問題
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――部活と金。この問題は昔も今も居残り続ける課題ですね。
中村 高校野球に限らず、部活動にかかる費用を社会としてどう負担するのかが、正面から問われていると思います。強豪の私立校の多くは、学校や選手の保護者が費用を負担している。一方、公立校の場合は学校からの支出がほとんどないので、選手の保護者と地域の寄付というかたちに偏ってしまう。
アメリカの例で言うと、NCAA(全米大学体育協会)はテレビの全国放送で莫大な放映権料を得て、それを各校に分配する仕組みがあります。それだけの規模のお金が、大学スポーツの活動費用として動いています。学生野球を商業化して、たとえばユニフォームに商標を一つだけつけていいとか、スポンサー企業を募集して用具に貼っていいとか、そういう形で民間のお金やメディアマネーを入れられるようにすれば、学校や保護者、地域の負担はかなり減らせるはずなんです。ただ、日本の高校野球は学生野球憲章で商業化を禁じているので、結局は学校か保護者か地域が負担するしかない。池田のような公立校の場合、特に地域の負担が重くなってしまう構造になっています。
田中 高野連が非商業主義を守ろうとする理由を、中村さんはどうお考えですか。
中村 一番大きな理由は、選手のプロ化を防ぐためです。全面的に解禁すると、たとえば大阪桐蔭や横浜のような名門校には大量のスポンサー企業がつき、用具メーカーからの提供も受け、練習試合の入場料まで取れるようになる。おそらく億単位、下手をすれば何十億という規模で稼げるようになるはずです。そうなると選手は当然勉強どころではなくなり、部活動の中で選手が事実上、給料のようなものを受け取るようになりかねない。さらに、どれだけお金を積めるかで進路(入部先)が決まるようなことにもなりかねない。そうしたプロ化を防ぐために禁止しているんです。
