甲子園の風BACK NUMBER
「自転車操業で、寄付金集めに奔走」名門・池田高校も苦しんだ“部活動とカネ”…なぜ甲子園出場に大金がかかるのか? 蔦文也監督と「甲子園払い」の実態
posted2026/09/11 17:40
甲子園で選手たちをねぎらう池田高校の蔦文也監督
text by

谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph by
Sankei Shimbun
今回NumberWebでは、『体罰と日本野球 歴史からの検証』の著者で、部活動や地域スポーツを専門とする高知大学の中村哲也准教授との対談が実現した。高校野球の常識を変えた池田高校の先進性、そして現在も続く“甲子園の課題”とは?【全3回の2回目、第3回も公開中】
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――『監督、神になる』では、池田高校野球部の寄付金について、かなりの時間を割いて取材されていますね。
田中 池田町で取材をする中で、町民から「甲子園払い」という言葉が出てきました。話を伺っていくと蔦さんは、甲子園に出ることを想定して、高額の野球用具を購入していたことがわかりました。いわゆるツケですね。先行投資ともいえる。寄付金の余剰金でツケを精算するわけですが、甲子園で勝っても資金は残らない、自転車操業のような状態でした。
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中村 野球に限らずですが、部活動、特に全国大会となると多くのお金が必要になります。高校野球の場合、ネックになるのは応援団の旅費です。最近は全員が揃いのシャツを着て、メガホンも帽子も揃えています。もちろん選手のユニフォームや用具の費用もありますから、そんな大金をどう集めるのか、決して容易な課題ではありません。
寄付金集めは“人海戦術”だった
田中 今年の春、選抜出場を果たした高知農業を取材した際、校長先生が「見切り発車で(寄付金集めを)始めてます」と言っていました。寄付金集めとは一体どういうものなのか、甲子園は極めて機能不全なんじゃないか、という疑問が浮かんできた。ただ、高知農業のような地方の公立高校は出場することが珍しいから、金を集めやすい面もあると思うんです。周りの人も「これ一度きりだろう」と思って出してくれる。
中村 池田のような田舎街の公立高校で甲子園の常連校にもなると、苦しい台所事情だったということは容易に想像がつきます。大きな寄付の母体があるわけでもない。進学校や伝統校なら、社会的に高い立場のOBがまとめて寄付をしてくれることもあると思うんですが、池田の場合はそれも厳しかったはずです。公立で、田舎で、有力なOBもたくさんいるわけではない中でたびたび寄付をとなると、地元の方にとってはかなりの負担、ある種の追い立てのようなことになっていたんじゃないかと想像できます。

