Number ExBACK NUMBER
「この仲間がいたから…」高校駅伝の超名門で起きた“もうひとつのドラマ”…女子短距離チームが「まさかのトラック日本一」奇跡はなぜ起きた?
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byTadashi Hosoda
posted2026/09/08 11:02
今夏のインターハイ女子トラック部門で総合優勝を果たした佐久長聖陸上部の(左から)阪真琴、宮澤希、中村波南、鎌倉梨々華の3年生4人
「赴任して1年目に駅伝部が都大路で日本一になったんです。そこで彼らが生活面でも、練習面でも並外れた努力をしているのを目の当たりにしまして。高見澤(勝)監督や市村(一訓)コーチの、言葉は悪いですけど“狂気”に近いほどの熱意や、それに呼応する選手たちの雰囲気に触れて『日本一になるチームって、ここまでやるんだ』と。そこでふと、そもそもなんで短距離とか長距離とか分けて考えていたのかなぁと思って」
強いチームを目指す上で、どの種目でも本質的なメンタリティに違いはないはずなのだ。そんなシンプルな事実に、早川はここでようやく気付いた。そしてそれに気づいてからは、駅伝部の存在はむしろ格好のお手本にもなったという。
「駅伝の名門」→「陸上競技の名門」になるには?
かつては駅伝部の背中を追いかけるだけだった陸上部は、いつしか全国レベルの強豪へと変貌を遂げた。その一方で、実は今夏のインターハイでは個人・リレーともに単独種目では日本一には届かなかったという現実もあった。
ADVERTISEMENT
3つの種目でいずれも銀メダルを手にした阪は、その稀有な経験をこう振り返る。
「もちろん悔しい気持ちは大きいです。でも、いまは少し時間が経って、もし1番を獲れていたら『やってきたことが全部正しかったんだ』と思ってしまったかもな……と感じるようになりました。むしろ負けたからこそ、常に上を目指し続けられるというか。
何かを欲し続ける、貪欲に競技を楽しみ続けられるというのは、あと1歩のところで勝ち切れなかった悔しさがあるからこそ。それを持てるのは敗者の特権でもあると思います。だからこそ、この経験を糧にしていつか『あの時負けてよかった』と思える日が来るように頑張りたいです」
今夏のインターハイを沸かせた4人の3年生部員は、いずれも卒業後も大学で競技を継続予定だという。そして、駅伝部が「名門」と呼ばれるようになったのは、卒業後も活躍し続ける名ランナーたちを何人も輩出してきたからこそでもある。
果たして佐久長聖陸上部の歴史を変えた面々は、卒業後にどんな輝きを見せてくれるだろうか?


