- #1
- #2
大相撲PRESSBACK NUMBER
「ベンチプレス220キロくらいを普通に…」安治川親方&安青錦の担当トレーナーが語る「力士の筋トレ事情」重視する意外な部位とは?
text by

天羽李子Riko Amo
photograph byTadashi Hosoda/JIJI PRESS
posted2026/08/28 17:00
サンプレイで安青錦を担当するトレーナーの渡辺航平さん(左)、稽古でトレーニングに励む安青錦(右)
220キロくらいを普通に……
「体を起こさないためには、あまり体を反らさないことが大事です。普通の筋トレでは、むしろ体を反らせる動きが多い。例えばベンチプレスなら、通常は大きく胸を張って背中にアーチを作り、その状態でバーベルを上げ下げすることで胸に負荷をかけます。でも相撲で胸を反った状態というのは、上体が起きてバランスを崩しやすい、かなり危険な姿勢です。必要なのは、脇を締め、体を丸くした状態でも最大限の力を出せること。ですから力士には、あえて手幅を狭めにして、胸をあまり反らさずにバーベルを上げるよう指導しています。手幅を狭くすると扱える重量も下がりますが、安青錦はそれでも220キロくらいを普通に上げていますね」
ボディビルダーとは目指すものが違う
相撲には、四股やすり足、鉄砲といった日々の稽古を通して培われる、いわば“土台づくり”の動きがあり、これらの反復によって、力士特有のしなやかな筋肉が養われていく。近年は相撲界でもウエイトトレーニングが一般的になり、安青錦のようにパーソナルトレーナーの指導を受ける力士も珍しくなくなった。一方で、「筋トレをやりすぎると筋肉が硬くなる」と警戒する親方も少なくない。
渡辺さんも、一般的な筋力トレーニングのセオリーをそのまま力士に当てはめることはできないという。
ADVERTISEMENT
「例えば背中を鍛えるラットプルダウンも、ボディビルダーのように広く大きな背中を作ろうとするなら、手幅を広く取って、胸を張りながら引くのが基本動作になります。でも相撲で必要なのは、立体的な筋肉をつけることではない。力士には狭いグリップを使ってもらい、少し前傾したまま、脇を締めて引くように指導しています。懸垂も同じで、普通は肩幅より少し広めに手を取りますが、力士にはかなり脇を締めた状態でやってもらいます。とはいえ自分の体重を持ち上げる懸垂は、体の大きな力士にとって簡単な種目ではありません。できるのは一部の限られた力士だけですが、安青錦はこれを10セットはこなしていますよ」
安青錦の相撲のもう一つ大きな特徴が、低い姿勢から相手の懐に潜り込み、まわしを引きつけて圧倒する取り口だ。その相撲を支える「引く力」こそ、渡辺さんがトレーニングで最も重視していることの一つだ。


