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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「夢のなかにいるみたいだ」苦節8年目、打者転向したDeNA勝又温史がついにチャンスをつかんだ理由「彼には不器用でも“努力する才能”がある」
text by

石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySankei Shimbun
posted2026/05/18 06:29
入団8年目、打者転向して5年目にして、ついに一軍で力を見せ始めた勝又温史。チームにもファンにも愛されるその人物像に迫る
「練習はもちろん、練習後も遠征先の宿舎の玄関前でもずーっと昼夜問わずバットを振っているんです。そこに1年目、2年目、3年目と中身を入れていき進化していった感じですね。あと勝又は、わからないことがあるとすぐに質問してくるんですよ。ロジカルというよりも感覚、感性が強いタイプだから、自分で考えてもわからないことは素直に聞いてくる。ただ、あれこれ言ってしまうと、パニックになったりキャパオーバーになってしまうので、本当に一言、二言伝えるか、新しいことも1日1個ぐらいしか教えませんね」
不器用かもしれないが、素直であり、貪欲であり、地道に努力できる才能がある。大村コーチは感心した様子でつづける。
「育成から這い上がって、真面目に努力してコツコツとつづけてきた選手。誰ひとりいない練習場でバットを振りつづけた、あの純粋な気持ち。結果を出さなければ明日はない、と退路を断つタイプなので、プレッシャーを力に代えてきたことが今の開花に繋がっていると思います。そして時間がかかる不器用な選手が結果を出し始めると、すぐに身についたものは離れない。努力という土台、器があるので、そこからは簡単にこぼれることがないんです」
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一筋縄ではいかないだろうが、これから先も期待できることを大村コーチはほのめかした。
これまでの努力を“お守り”に
夢の世界の住人にはなりつつあるが、覚めない夢はなく、今後勝又はこれまで以上に苛烈な現実世界と向き合いサバイブしていかなければならない。もちろんそこは若くして苦労してきただけに油断はない。地に足を着け勝又は言う。
「一軍を経験して、やっぱこれがプロの世界だなって実感しています。ただキラキラして見える世界ですけど、本当にシビアな場所でもあるんで、安心できる時間は1秒もありません。ヒリヒリとした毎日ですが、そんななかで心折れずにできるのは、やっぱり自分が日々積み重ねてきたものがあるからです。これまでやってきたことを“お守り”にして、それを原動力として頑張れているので、毎日を楽しめればと思います」
人懐っこい表情で勝又は笑った。自分にしか作れない自分だけの絶対的な“お守り”を胸に、今日も夢とリアルのはざまで、10の力でフルスイングをする――。
〈全2回の1回目/つづく〉

