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マリニンが世界選手権3連覇、大復活のウラで…男子メダリスト“全員が反対した”ルール改定案のナゾ「まず選手の意見を聞いてほしい」声明に込めた懸念
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田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2026/04/04 17:00
まさかの結果となったミラノ五輪を経て、世界選手権3連覇を達成したマリニン(米国)
「まずアスリートの意見を」主張したマリニン
マリニンは、この提案にはっきりと異議を表明した。
「彼ら(ISU)はこれまで、このスポーツは技術と芸術の混合だと主張してきました。でもルール変更のいくつかは、僕たちが長年かけて成し遂げてきたレベルの高さを取り上げてしまう内容です。特に観客の視点で見ると、ようやくルールに慣れてきたところなのに、また新たなルール変更に慣れなくてはいけない。それで見るのをやめてしまう人もいると思うし、選手にとってはトレーニングの仕方を根本から変えなくてはならないことになります」
「ISUなどこれらのルール改定を考えている人たちは、アスリートたちの意見を聞いてほしい。ISUが現在の名声を得たのは、アスリートたちがいるからなのです。これらの改定を再考して、何がこのスポーツにとって最善なのか、まずアスリートたちの声に耳を傾ける機会を設けてほしいんです」
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マリニンが反対する理由は、ジャンプの数が減ることによって自分が不利になる、ということではないだろう。現場で戦うスケーターたちを置き去りにしたまま、「大人たちの都合」でどんどんこのスポーツが変わっていってしまうことへの懸念に違いない。
気になるのは、この改定案の可否がいつどこで決められるのか、ということだ。実はISUの新体制により、これまで大きなルール改革はISU総会での加盟国の投票で決定されていたが、現在は14人からなるISU理事会のみで通すことが可能になってしまった。そのため具体的な詳細がわからないまま、いつの間にか決定されていた、という事態が起きる可能性もある。
マリニンをはじめとする現役の選手たちが危機感を抱いているのも、無理はないことなのである。
マリニンの敗北が、フィギュアに与えた影響
だが一つの希望は、ミラノオリンピックが予想以上の盛り上がりを見せて、フィギュアスケート人気が元気を取り戻しつつあることだ。その理由はもちろん、りくりゅうやアリサ・リュウ、坂本花織をはじめとするメダリストたちが素晴らしい演技を見せたこと。そして皮肉なことに、マリニンの予想外の敗北が、全世界で大ニュースとなったことだ。
特に筆者が在住するアメリカでは、それまでフィギュアスケートなどを見たこともなかった知人たちから、「マリニンに何があったの?」と何度も聞かれた。
ただ失敗しただけなら、ストーリーはここまで大きくならなかっただろう。人々の心を打ったのは、ショックから立ち直る間もなかったマリニンが、金メダリストのミハイル・シャイドロフを長い間ハグして祝福し、スポーツマンシップのお手本を世界に見せたことだった。

