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あの「矢場とん」店員が…なぜドラフト6位でプロ野球へ? 週末はフルタイム勤務、トレーニングは勤務後の深夜…最速153キロ剛腕の「超異色の履歴書」
posted2025/11/13 06:01
楽天からドラフト6位指名を受けた王子の九谷瑠。1年前に味噌カツで有名な「矢場とん」を退社し、強豪社会人の王子に入団していた
text by

沢井史Fumi Sawai
photograph by
Sankei Shimbun
最速153キロの速球と多彩な変化球を操り、今秋のドラフト会議で楽天から6位指名を受けた九谷瑠(王子)の名は、ドラフト会議直前から大きな話題を呼んでいた。
県立堅田高校(滋賀)から大阪大谷大へ進学。大学時代は通算35試合に登板し10勝8敗。防御率は2.22の数字を残している。
当時は近畿学生野球リーグの2部に所属し、2年春に2部優勝した経歴はあるが、1部に在籍することはなく、全国の舞台に縁がなかった九谷の名を知る者はほとんどいなかった。
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そんな“シンデレラボーイ”のここまでの足取りは、まさに努力の積み重ねの日々だった。
大学卒業後…選んだのはあの「有名味噌カツ店」
大学卒業後、22年春から名古屋の味噌カツ「矢場とん」に入社し、野球部に所属。
練習は午前中のみで、午後からは味噌カツ店のホールスタッフとして働いた。曜日によっては丸1日ホールに立つこともあり、ホールでの勤務後は夜の10時からフィットネスジムでトレーニングを深夜まで続け、翌朝6時からの通常練習に向かうこともあった。接客業と野球の二足の草鞋を履き、23年の全日本クラブ野球選手権では準優勝に貢献した。
練習時間は限られていたが、とにかく必死だった。今ある時間の中でストイックに野球に打ち込んでいく中、入社時は140キロ台半ばだったストレートが3年目になると150キロに到達するなどその努力の成果はみるみるうちに表れていった。

