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「麦のようにがんばっていきたい」来季続投、踏まれてもまっすぐ伸びるカープ新井貴浩監督の忍耐はいつまで続くのか?
posted2025/09/29 11:00
今季も我慢の采配を強いられた新井監督。来季の現状打開はなるか
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前原淳Jun Maehara
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JIJI PRESS
新井体制下で初めて優勝争いに絡むことができないまま、広島のペナントレースは幕を下ろした。2年連続Bクラスとなった結果以上に、満たされないやりきれなさがある。
独走した阪神は強かった。投打ともに脂ののった選手がそろい、戦力的に他を圧倒していた。阪神のスタメンからレギュラーを奪える広島の選手は一体何人いるか──。広島はまだ強いチームではなく、選手たちもまだ強くはなかった。それを突きつけられたシーズンだった。
「(来季も監督を)任せていただいて、また期待していただいて、ありがたいことですし、その期待に応えられるようにがんばっていきたい。麦のようにがんばりたい」
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4年目となる来季も指揮することが決まった新井貴浩監督はそう口にした。自身が大事にする言葉「踏まれても、踏まれても、真っすぐ伸びる麦のように生きろ」を胸に刻む。
現役時代、見る者だけでなく、ともにプレーする者までも惹きつける不思議な魅力を持った“新井選手”は、監督となっても変わらなかった。就任1年目から選手の心をつかみ、4年連続Bクラスに沈んでいたチームを2位へと導いた。
スター選手不在のチームの広告塔も担い、ファンサービスに応え、球団からの要望にもすべて対応。報道陣に対しても明るく真摯に向き合ってきた。現場では選手の意思を尊重し、コーチに積極的な指導を促した。「選手ファースト」とも言われた方針で、選手に自主性と積極性を持つことを求めた。
2年目も同じように現有戦力を最大限に生かしながら、シーズン終盤まで先頭を走った。だが、9月に歴史的な大失速。クライマックスシリーズ出場圏外の4位まで転げ落ちた。
2年続けて優勝争いに加わりながら、頂点には立てなかった。シーズン終盤に主力選手の離脱が相次いだ1年目とは違い、2年目の終盤はフルメンバーでも踏ん張ることができず、停滞感を打ち破る存在も現れなかった。
3年目の新たな試みは実らず
優勝を争うだけでなく掴み取るためには、従来のやり方では限界があった。他球団のように大型補強する球団ではない。だから今季は、ある程度計算できる中堅以上の選手より、潜在能力を秘めた可能性のある若手の上積みに期待し、待つだけでは訪れなかった世代交代のうねりを自らつくり出そうとした。
だが今季は、守備面や走塁面でミスが散見された。若手に切り替えた弊害と言えるかもしれない。就任当初は新時代的な指導法とみられていた選手を認める方針が、知らぬ間にチームに甘えや緩みを生んだようにも見える。
