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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
なぜ井上尚弥に接近戦を仕掛けなかった? 長谷川穂積が実況席で感じた“敗者アフマダリエフの誤算”「警戒心マックスになりすぎ」「接近戦でも厳しい」
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/09/21 11:04
挑戦者ムロジョン・アフマダリエフを圧倒した井上尚弥。長谷川穂積さんが語る、「アフマダリエフが距離を詰められなかった理由」とは
長谷川さんの読み通り、井上は試合翌日の記者会見でこの試合をライブで見たと明かし、「自分がやりたいボクシングをクロフォードがやっていたので、そういう面ではすごくいいイメージになりました」と振り返っている。長谷川さんが続ける。
「ボクサーって試合が近づいたときの出来事がけっこう頭に残るんですよ。残らない人もいるけど、僕の場合は残ります。たとえば現役時代のウィラポン第2戦のとき、試合の10日くらい前のスパーリングで左アッパーがよく当たったんです。よし、これを試合で使おう、と。この左ストレートをフェイントにした左アッパーは試合でけっこう当たったんです。これが試合の2カ月前とかの経験だったら使わなかったと思うんですよね」
長谷川穂積が語る井上尚弥への“共感”
長谷川さんが難攻不落と思われたウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)からタイトルを奪ったのが2005年4月のこと。翌年3月の再戦で、長谷川さんがウィラポンを9回TKOで返り討ちにした伝説の一戦だ。
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「井上選手と話していると、僕は勝手に『感覚的に似ているな』と感じることがよくあるんです。だからクロフォードの戦い方はけっこう影響したんじゃないかなと思うんです。ロープを背負ったらサッとサイドに動く。もちろん練習でしていた動きだとは思うんですけど、あの試合を見たときにそう感じました」
後編では井上の技術をさらに詳しく分析した上で、中谷潤人とのドリームマッチについても聞く。
<続く>

