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世界王者・武居由樹の覚醒「あの衝撃KO防衛」本人に聞いた“意外なウラ側”…次戦も難敵“那須川天心のスパー相手”メディナは「見れば見るほど強い」
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/07/29 11:02
WBO世界バンタム級王者の武居由樹(29歳)。5月の防衛戦ではユッタポン・トンディをわずか127秒で一蹴した
右肩負傷で試合延期も…衝撃の初回KO勝ち
さらに今年1月、右肩の負傷で2度目の防衛戦を延期し、ブランクを作った経験がさらに大きな糧となった。
「試合を流してしまってフラストレーションは溜まりました。2月から5月にかけてバンタム級が大きく動きましたし。ただ、右が使えない中で左を徹底的に磨けたのは良かったと思います」
2月にWBA王者の堤聖也(角海老宝石)が比嘉とダウン応酬の激闘を演じてドロー。4月にはWBC王者の中谷潤人(M.T)とIBF王者の西田による2団体統一戦が発表された。武居は練習再開からおよそ2カ月、戦線離脱の悔しさをぶつけるかのように左のパンチをひたすら練習した。その成果が表れたのが5月のユッタポン・トンディ(タイ)戦だ。結果は初回KO勝ちだった。
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「あの試合、初めて左フックで倒せたんです。それまではだいたい右フック、左ボディでした。K-1時代も左フックはなかったんですよ。これは自分の中ですごく意味のあることでした。成長を感じることができました。自信にもなりましたし、初回KOでダメージなく終われたことも大きかったです」
けがの功名は技術面だけではない。激闘とハードトレーニングから自分を守る「体のケア」への意識も高まった。
「疲労を抜くために酸素カプセルによく入るようになりました。試合間隔が短いので脂肪を体に乗せないようにも気を付けています。あとはインナーマッスルのトレーニングをするようになりましたね。練習前に必ずインナーをやる。インナーを鍛える、練習前に温める。これが習慣化しました」
武居はこの1年で経験を積み、ボクサーとしてのランクを一つ上げたと言えるだろう。それはけがの功名であると同時に、目の前に広がる未来が以前よりもクリアになってきたということでもある。後編ではいよいよ那須川への思い、バンタム級戦線について聞いていく。
<続く>


