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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「今になって、勿体ないことしたなぁ…と」絶好調日ハム“超当たり年ドラフト”ウラ話…半数球団が「いらない」評価の右腕が“エース格に覚醒”のナゼ
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安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/07/21 11:01
今季、ここまで6勝を挙げ防御率は1点台と、エース級の好投を続ける日ハムの北山亘基。2021ドラフト組だが、指名順位はまさかの8位だった
ドラフト当日、私はTBS系のインターネット放送のドラフト会議実況中継で、解説席に座っていた。
支配下ドラフトの最初から、育成ドラフトの最後の1人まで、次々と指名される選手たちのプロフィールを簡潔に語り分ける、なかなかの難行である。
「北山君が、まだ出ていませんね…」
その中で、私は、「京都産業大の北山君が、まだ出ていませんね」と2度ぐらい発言したのを覚えている。それぐらいの投手だった。
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打者の手元でガッと来る「伸び感」抜群の速球は、アベレージでも145キロ前後、好調時は150キロをクリアする勢いだったし、スライダー、カーブ、カットボール、フォークとの緩急も冴えていた。なにより登板するたびに、いつも実力を発揮するコンスタントさが信用に値する投手だと見ていた。
「野球のほうも十分プロでお役に立てるレベルだと思っていましたし、授業もしっかり出て、成績も優秀。それでもえらそうにしない。はたち前後の若者ですから、普通は気持ちの波も大きかったりするんです。でも、北山の場合はいつもおんなじで、いつもフラット。リーダーの資質を持っていましたね」
京都成章高の2年生からその素質を見出し、大学4年間、手塩にかけて育て上げた京都産業大・勝村法彦監督が振り返ってくださった。
「話は12球団全部からありました。だいたいが、3位から4位で……みたいなおっしゃり方でしたんでね。こちらもそのつもりでおったんですけど。正直、ヒヤヒヤしていました。もう、ないかもしれないって思ったり、指名がなかったら、どんな言葉をかけたらいいか。そんなことばっかり考えて。指名された時は、いやもう、ほんとにねぇ……ホッとしました」

