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「俺たちは昨日、何をしていたんだ?」46歳でまさかの急逝…バスケBリーグ“プレーオフ決勝進出”宇都宮のヘッドコーチがチームに残したもの
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2025/05/25 17:00

今年2月に46歳の若さで急逝した宇都宮ブレックスのケビン・ブラスウェルヘッドコーチ。それでもチームに残したものは大きかった
およそ1年前のチャンピオンシップ(CS)準々決勝。ブレックスは、ジェッツをホームに迎えた初戦に敗れた。日本でもっとも熱いと言われるファンを背に戦うブレックスが、CSのホームでの初戦を落とすのは初めてのことだった。
チームに影響を与えたブラスウェルの“檄”
翌日、試合に向けたミーティングが始まってすぐのこと。当時の佐々宜央HCは選手を鼓舞するために入念に準備してきた話をしようとしていた。だが、その前に口を開いたのが、当時はアソシエイトコーチ(※一般的にはアシスタントコーチの中で最もHCに近いコーチにこの名称が使われる)を務めていたブラスウェルだった。
「先に、オレに話させてほしい」
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ブラスウェルは、こう訴えかけた。
「普段はそこまで活躍していない相手チームの選手でも、ものすごいプレーをしていただろ? それがCSなんだよ。そんな選手にプレッシャーをかけられ、ターンオーバーをして、俺たちは流れを失っていたよな。どんな選手でもそれだけのレベルのプレーを見せるのがCSという舞台なんだ。俺たちは昨日、何をしていたんだ?」
そんなスピーチの効果もあったのか、2戦先勝方式で行われるGAME2でブレックスは勝利をつかみとった。
「本当に死ぬ気で戦わないといけない」
複数の選手がそう感じたほど、熱いメッセージだった。
当時の様子を、ブレックスで長年にわたり通訳を務め、数多の外国籍のコーチや選手の言葉を伝えてきた加藤敏章はこう振り返る。
「ケビンが突然、前に出てきた感じだったので……はじめは『あれ?』と思いましたけど、話している内容はまさにその通りだと感じるものでした。何より、本当に悔しいという彼の気持ちが伝わってくるスピーチでした」