「普段、私はフォロー外のユーザーからのDMはほとんど見ないんですけど、帰りの車の中で何気なくインスタを開いたらそのメッセージが最初に表示されたんです。『今、栗原さんとすれ違ってすごく嬉しかったです。話しかけたかったけれど、仕事に向かっている途中で話しかけられなくて』という内容で……」

　興味を持ってメッセージの送り主であるKoukiさんのインスタグラムを見てみると、写真家として撮影した作品が並んでいた。その中で栗原さんが目を奪われたのは、Koukiさんが2023年の世界水泳で撮影したスイマーたちの写真だった。

「私と同じスポーツ選手で、被写体は言ってみれば素人なのにまるでモデルのように写った写真が並んでいました。選手がこんな表情ができるんだ、素敵な写真を撮る人だなと感じて、『いいね』をしたのがスタートでした。その時は恋愛に発展するなんてお互い思ってはいなかったんですけど」

　その『いいね』をきっかけに、メッセージのやり取りが始まった。

©︎Kiichi Matsumoto

「彼は野球が好きで、今までも海外の野球選手に『今日のプレーはすごくかっこよかったよ』というようなメッセージを英語で送ったりしたことはあったそうで、それと同じ感覚でいたみたい。だから私からリアクションが返ってくるとは全く思っていなかったようです。私の方も『素敵な写真なので投稿をこれからも楽しみにしています』というようなメッセージを返して、そこから徐々に一日に2〜3通ずつくらいやり取りするようになりました」

緊張の初対面「彼が緊張しすぎていて…」

　2人が実際に顔を合わせたのは、そこから約3週間後のこと。オンラインでのやり取りしかない人と待ち合わせをする経験は栗原さんも初めてだったが、何より「元日本代表選手の栗原恵」に会うKoukiさんの緊張ぶりは凄まじかった。

現役時代の栗原さん（2008年北京五輪予選）　©︎Toshiya Kondo

「彼の方は緊張しすぎていて、その様子がとにかく面白かったんです。だから逆に私の方はまったく緊張しなくて（笑）。私は島（能美島）の出身で、島の学校では人数が少ないから男の子も女の子も関係なく仲がいい。兄もいましたし、もともと男性と話すことを変に意識したりはしないんです。そんな感じで私も気楽に話してはいましたが、2人でいる時間は心地がいいというか、自然体でいられるという感覚はその時からありました」

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