- #1
- #2
格闘技PRESSBACK NUMBER
平本蓮“ドーピング疑惑”見過ごされた本当の問題点…WADA規程は「禁止薬物を入手した時点でアウト」専門家も警鐘「教育せずに検査、意味がない」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2024/09/13 17:01
9月2日に記者会見を行い、“ドーピング疑惑”を否定した平本蓮。その後のRIZINの会見で検査結果が「陰性」だったことが発表された
平本が赤沢幸典から禁止薬物を入手していたことは確かだし、正当な理由なく所持していたことも否定できない。結果的に未遂に終わったとはいえ、「一時は使用を企てた」と見られても不思議ではない。WADAのアンチ・ドーピング規程に当てはめれば、今回の平本は“クロ”というしかない。持っているだけで処罰の対象となるのだから、赤沢から禁止薬物を入手した時点でアウトなのだ。「使わなかったからセーフ」というわけではない。
日本格闘技界に蔓延する「ドーピングへの認識の甘さ」
にもかかわらず、なぜ平本が“シロ”になったかといえば、現在のRIZINが処罰対象として先出の11項目のうち「1」しか定めていないからにほかならない。つまり「使用したか否か」だけにフォーカスされているのだ。
9月5日の記者会見で、RIZINの榊原信行CEOは「ドーピングに引っかかる薬物を入手していた時点で、ルールによってはアウトなんです」と語っている。これはWADAの違反項目を理解したうえでの発言と察することができるが、榊原CEOはこうも言った。
「現状のRIZINのルールではそこまでの規程がない」
なぜRIZINでWADAに準じた規程を作らなかったのか、と叫びたい気持ちもある。木村“フィリップ”ミノルのドーピング陽性を受け、懲りたはずではなかったのか。一方で、RIZINが抱えている問題は現在の日本の「ドーピングへの認識の甘さ」を象徴しているようにも思える
その証拠に、今回のドーピング疑惑が持ち上がったときも、世間では「やったかどうか」だけが話題の対象となっていたではないか。「なぜ血液検査や毛髪検査をやらないのか」という意見はそれを如実に物語っている。
残念ながら、世界基準のアンチ・ドーピングの意識と日本のそれとの間には大人と子供ほどの大きな隔たりがあると言わざるをえない。アンチ・ドーピング事情に詳しい、オリンピックスポーツに携わるドクターは筆者にこう語った。
「ドーピング教育もしてない選手に、ドーピング検査をやっても意味がない」