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本当にネリは井上尚弥の“刺客”なのか? 米記者が断言する“悪童”のリアルな実力「尻込みした挑戦者とは一線を画す」「ドネアほど深みない」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/05/02 17:03
世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥に挑むルイス・ネリ
前述通り、2階級を制しはしたものの、どちらの階級でも防衛回数はゼロ。WBC世界スーパーバンタム級王座を保持していた2021年5月、フィゲロアとの統一戦ではボディブローで7回にKOされ、初黒星を喫した。これまでで最大のステージといえる一戦で完璧な形でストップされたことで、その評価は頭打ちになった感は否めない。
フィゲロア戦以降もネリは4戦全勝(3KO)だが、連戦連勝を続けていた頃ほどの存在感は取り戻せていない。このようにネリがいわゆる“underachiever (実績が能力以下に止まる選手)”として燻っている背景には、日本のファンならご存知の規律、集中力不足があるのではないか。
「フィゲロアに敗れるまでのネリなら、井上が前々戦で対戦したスティーブン・フルトン(アメリカ)よりも一段上にランクしたかもしれない。ただ、現在のネリはフルトンよりも下だろう。フルトンほどの技術はないが、より優れたパンチャーではある。そのパワーゆえに危険な選手ではあるが、井上を相手にいわゆる“パンチャーズチャンス”があるとも思わない。昨年、悪くない選手ではあっても、世界王者レベルではないホバニシャンとネリは生きるか死ぬかの試合をやったばかり。現状ではエリートレベルに近い選手ではあるまい」
Boxingscene.comの元シニアライターで、現在はBoxing Newsなどで健筆を振るうキース・アイデック記者のそういった指摘がネリの立ち位置を適切に示している。危険な選手ではあるが、おそらくエリートボクサーではない。
昨年7月、井上とスーパーバンタム級の統一戦を行い、8回TKOで討ち取られた前WBC、WBO王者のフルトンよりも格的には一段下の元チャンピオンと見るべきか。だとすれば、ネームバリューはあっても、“井上にとって最高級の難敵”と称されるべきではないのは確かに違いない。