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「VARがなければレッドどころか…中国は意図的に」日本通ブラジル人記者が斬るU-23初戦と長谷部誠引退「監督でも欧州で成功してほしい」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAFP/JIJI PRESS(L),Takuya Sugiyama(R)
posted2024/04/19 17:11
来日中のブラジル人記者に日本のフットボールを聞くシリーズ。今回は五輪予選に臨むU-23日本代表と引退を表明した長谷部誠について聞いた
これは、コパ・リベルタドーレス(南米クラブ王者を争う大会)などでアルゼンチンやウルグアイの選手がブラジル相手にやる古典的な挑発行為。一種のマリーシア(注:狡猾な振る舞い)だね。ブラジル選手は誰もがその手口を知っているんだけど、それでも餌食になる選手が後を絶たない(笑)」
――ということは、良くも悪くも、中国選手もそのようなプロ選手特有の汚いプレーをする域に達した、ということでしょうか?
「そうだと思う。アジアで日本が圧倒的に強くなると、対戦相手はしばしばこういう手段を用いるようになる。西尾のみならず、日本のフットボール全体にとって良い教訓となった、あるいは教訓とすべき出来事だった。その意味で、西尾の愚行にも一定の価値があったと言えるんじゃないかな(笑)」
身長2メートルGKのパワープレー投入は幸いだったね
――その後、日本はMF山本理仁 (シント・トロイデン)を外してCB木村誠二 (サガン鳥栖)を入れました。
「システムを4-3-3から4-4-1へ変更し、基本的に低い位置で守備ブロックを形成して耐えた。大岩剛監督は慎重なタイプであり、いかにも彼らしい戦術変更だった」
――後半43分、中国はGK登録の身長2mの選手をFWとして投入する奇策に出ました。
「テレビ中継ではアナウンサーも解説者の松木安太郎と内田篤人も、背番号12でGK登録の選手がフィールドプレーヤーのユニフォームを着てFWとしてプレーしたことに戸惑っていたよね(笑)。結果的に彼が大きな脅威とならなかったのは、日本にとって幸いだった」
――1988年から2004年まで、プーマス(メキシコ)やメキシコ代表で活躍したホルヘ・カンポスという身長170cmに満たない小柄なGKがいた。彼は、クラブではしばしばFWとしてプレーしていました。
「そう。今回の中国人GKはカンポスとは真逆の真逆の特長を持ったGK兼FWだったけどね。終盤、どうしても得点が欲しい局面で長身のCBを前線に置いてパワープレーをすることは珍しくないけれど、近年ではカンポスのような例はないと思う。中国も、なかなか斬新な発想をするね」
この試合は一定の評価、マンオブザマッチを選ぶなら…
――今季、FC東京で絶好調の荒木遼太郎は最後まで出番がありませんでした。
「素晴らしいテクニックと創造性を備えたアタッカーで、個人的にはぜひ見たかった。攻撃的なチームを作るのであれば、中盤の構成は藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)、松木、荒木になるんじゃないかな。でも、監督が大岩さんで、しかも退場者が出た状況では仕方がなかったのかな。今後、彼にも出場機会が与えられ、決定的な仕事をしてチームを勝利に導くことを期待している」
――この試合の総合的な評価は?