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佐々木朗希“ロッテに突然メジャーを突きつけた”は考えづらい…スポンサー契約延長せず「実は1年前から準備を…」地元・岩手、アメリカで聞いた声
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/01 06:01
会見で新シーズンへの意気込みを語った佐々木朗希(22歳)。2024年は大事な1年になる
「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を見ていた球界関係者は、ササキほど軽々と102マイル(約164キロ)を投げる投手はいないと話していた。まだ若いからこれから投球の方法を学んでいくだろう。それを成し遂げたとき、もともと飛び抜けた球を持つササキはアンストッパブルな存在になるのではないか」
WBCで初めてその投球を見たボストングローブ紙のピーター・エイブラハム記者もそう述べていた通り、荒削りな佐々木にはまだ向上の余地がある。
まだ1シーズンを通じて働いた経験すらないのであれば、日本でその課題を克服してからメジャーへというのが一般的な考え方なのかもしれない。ただ、ここで発想を変え、マイコラスや他の米球界関係者の希望通り、よりのびやかに成長するためにアメリカを育成の場として選んだらどうなるのか。
スポーツニッポン紙が28日に伝えた通り、佐々木もそんなシナリオを希望していたようである。まずは日本一を目指すのではなく、目標である“世界一のピッチャー”になるために、なるべく早い段階からアメリカでの生活をスタートさせたい。メジャーのレベル、生活環境、言語などに肌で触れ、馴染んでいきたい。
用意周到なメジャー球団はもちろん適応と育成の重要度は熟知している。まだ身体作りが必要な段階の若武者に、いきなり中4、5日のローテーションを守ることを要求することはなく、当初は育成段階の選手として獲得を考慮するはずだ。
そういった意味で、佐々木とメジャー球団のニーズはすでに一致していたに違いない。報道通り、佐々木が今オフの渡米を希望していたのだとすれば、結局はロッテに残留することになり、ここで新たなモデルケースが誕生しなかったことは少々残念にも思えてくる。
焦点は球団とのコミュニケーション
ここまではすべてアメリカ側からの視点で話を進めてきたが、ロッテのファン、球界関係者から佐々木の早期渡米に反対意見が出るのはもちろん理解できる。通常であれば、高額の契約金を受け取り、そのチームから育成を受けたのなら、メジャーに行くにしてもまずは一定の成績を残した後でと考えるのはしごく真っ当な見方である。
“大事に育ててもらったロッテに恩返しを”。現状、日本球界の選手なのだから、そういったある意味で日本らしい考えが誤りだとはまったく思わない。プロ野球はビジネスであり、所属選手が25歳を待たずにポスティングシステムで移籍した場合、チーム側は割が合わないとマイナス面に思いを巡らせるのも当然であろう。
ただ、それももともと佐々木がどのようなプランを持っていたのか、その点に関してロッテとの間でどのようなコミュニケーションがあったかで見方は変わってくる。