第100回箱根駅伝(2024)BACK NUMBER
“一強”駒澤大学を打ち破った青山学院大学の自信の源は? 登録メンバー以外・卒業生含めて培ったチーム力〈第100回箱根駅伝〉
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/12 10:00
10区の宇田川瞬矢(2年)を笑顔で出迎える、原晋監督と青山学院大学のメンバー
「ずっと並走してくれてありがとう!」
また、シード権争いでは、こんなエピソードがあった。
9区終了時点で総合11位だった大東文化大学の10区アンカーの佐々木真人(3年)は、神奈川大学の酒井健成(2年)と並走する形となった。酒井はこう思っていたという。
「大東大さんがシード権争いをしていたので、そのアシストができればいいかなと思っていました。自分が前に出たり、引っ張ってもらったりして」
酒井の好アシストもあって、大東大は9年ぶりにシード権を獲得した。佐々木はSNSで、
「ずっと一緒に並走してくれた神奈川大学の酒井君本当にありがとう! 一緒に声掛け合ったり、引っ張り合うのすごい楽しかったです!」
と投稿した。
競い合う選手たちだが、こうして助け合う気持ちが存在することも、大学スポーツの魅力ではないだろうか。
忘れられない…中大復活の中心にいた吉居の走り
その一方、体調不良の選手が相次ぎ、力を発揮できない大学もあった。
優勝候補の一角にも挙げられた中央大学は、登録メンバー16人のうち14人が体調不良に悩まされていたと藤原正和監督は往路フィニッシュのあとに明かした。
「今年の4年生、キャプテンの湯浅仁、吉居大和、中野翔太を男にして卒業させてやりたかったんですが……。隙を作ってしまったマネージメントに反省すべき点があります」
総合13位に終わってしまったが、中大のエース、吉居大和がこの4年間、箱根駅伝で残した実績は多くの人の記憶に残るだろう。2年生の時は、1区で果敢に飛び出し、区間新記録をマーク。そして3年生となった前回大会では、駒大の田澤廉、青学大の近藤幸太郎と競り合う展開となり、最後は見事なスパートで区間賞。名門・中大復活の中心にいた吉居の走りはいつまでも忘れることはないだろう。
第100回という節目の大会が終わり、箱根駅伝は次の第101回大会に向けて動き出す。
若者たちがつないでいくたすきは、これからもつながれていく。