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崖っぷちから甦り…エース・石川祐希が明かすバレーボール日本代表が五輪切符を掴むまでの“重圧”「原因がわからないから引きずってしまって…」
posted2023/12/08 17:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Yuki Suenaga
発売中のNumber1086号掲載の[五輪予選の激闘を振り返る]石川祐希「逆襲のビジョンは見えていた」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】
エース・石川祐希の復活と日本の逆襲
石川祐希が、声を詰まらせながら、言葉を絞り出す。
「本当に苦しい状況でしたし、最後まで信じて、自分たちを信じて、戦った結果だと思います。目標を……達成したので、すごく嬉しいです」
普段、試合中以外ではあまり感情をあらわにすることのない主将が、パリ五輪の出場権を掴んだ直後のコートインタビューでは込み上げるものを抑えられなかった。
崖っぷちから甦り、掴み取った切符。日本の逆襲は、エース・石川の復活とともに成された。
今の日本代表は史上最強と言っていい。イタリア・セリエAで9季目を迎えた大黒柱の石川を筆頭に、海外リーグを経験する選手が増えて個の力が格段に上がり、フィリップ・ブラン監督の的確な戦術と噛み合ったことで年々力をつけてきた。今年はネーションズリーグで3位となり、主要な世界大会では46年ぶりとなるメダルを獲得。8月のアジア選手権も制覇し、世界ランキング5位で「パリ五輪予選/ワールドカップバレー2023」を迎えた。
8カ国中2カ国のみが出場権を得られる今大会は、強豪のセルビア、スロベニア、アメリカとの終盤の3連戦がヤマ場だと思われた。
終盤に控える強豪との対戦の前に1敗した事実
ところが初戦、力の差があると見られていたフィンランドとフルセットまでもつれた。第5セット中盤、石川はサーブレシーブを立て続けに崩され、思わず顔を覆った。普段ならサーブレシーブが乱れても、自分でスパイクを決めて何事もなかったように試合は流れていくが、この日はスパイクもミスになり連続失点。10-11と逆転され、大塚達宣と交代した。
高橋藍のパイプ攻撃や山内晶大のブロックで追いつき、辛くも勝利したが、翌日のエジプト戦も1、2セット目を大差で取りながら、3セット目に突如流れを奪われる初戦と同じ展開。開き直って攻めてくる相手のサーブに押され、ブロックを弾き飛ばすスパイクに対応できず、2戦目にして黒星を喫し、いきなり崖っぷちに立たされた。
終盤に控える強豪との対戦の前に1敗した事実は重くチームにのしかかった。
ミックスゾーンに現れた石川は、落胆や動揺を極力見せず、冷静に受け答えしていたが、いつもより歯切れは悪かった。