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伊藤華英が目指す、女子学生アスリートだけでなく男性にも知ってもらいたい「生理の正しい知識と理解」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/12/05 13:00
「女子学生アスリートへの訴求はもちろんですが、同時にこの活動に関しては男性にも正しい知識と理解を持ってほしいという願いがあります。ですからいくつかの候補の中から男性にも敬遠されず、なおかつ“あれっ? 何のことだろう”と興味を持ってもらえそうなネーミングに1252 プロジェクトの中で議論し、決定しました」
――具体的にはどのような活動をしているのですか?
「中学、高校、大学年代の学生を対象に講義(1252clubroom workshop!)を受けてもらいます。最初はオンラインと対面のハイブリッドで始めましたが、今は学校やスポーツクラブに足を運んで、直接お話をする機会も増えてきています。時間で言うと基本的には1時間×2回で、1時間は女子学生だけではなく男子学生や指導者も一緒に講義を聴いてもらい、もう1時間は希望者を集めて具体的な対処法などもお伝えしています。場合によっては専門家も同席して、一緒に話をしています。内容はホルモン療法、PMS(月経前症候群)、ピル、排卵などさまざまなことを話しています。プロジェクトを始めてから約2年半での実施回数は約60回で、参加者は累計で約3000人になっています」
――男子学生も参加するのですね。
「このプロジェクトでは男子学生も女子学生も一緒に講義を受けています。ある大学では半数以上が男子学生だったこともありますよ。将来、保健体育の教員になりたいという男子学生も多くいて、『勉強になった』『今まで知らずにいて恥ずかしい』など、ポジティブな意見を聞きました。ただ、一番多いのは『知らなかった』という声。『月経に対して興味がない』『知るのが嫌』というネガティブな反応も多いです。けれどもやはり、私たちが真剣に伝えれば学生の皆さんは真剣に受け取ってくれるという印象です」
人材と資金の不足が課題
――課題はありますか?
「人材不足ですね。やはり、広めていくにはマンパワーが必要です。それと費用の問題。非営利団体として行なっている活動なので資金調達が難しいのが現状です」
――そのような状況ですと、自治体との連携が始まったのは朗報ですね。
「来年に第1回目の国民スポーツ大会(※1946年に始まった国民体育大会が2024年から名称変更)を開催する佐賀県と、このほど『女性アスリート支援に関する連携協定』を結びました。地方では学生アスリートが相談できる産婦人科が近くでなかなか見つからなかったり、10代の女性が産婦人科に行きにくいような雰囲気があったりします。学校ももちろんですが、自治体との連携はこれからもっと増やしていきたいと考えています」
――海外にも展開していきたい?
「共同で企画を実施したことのある全日本柔道連盟を通じてつながった国際柔道連盟の役員が賛同してくださり、『1252プロジェクト』を公式HPで紹介してくれました。世界的に見ても、お医者様による発信は少なくないのですが、アスリートによる活動は珍しいようなので、今後は英語での発信もやっていかなくてはと考えています」