酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「台湾・韓国チアリーダー大盛り上がり、日本の即席応援団もオーストラリアを…」“井端ジャパンだけじゃない”劇的アジアCSを現地で見た
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byGene Wang/Getty Images
posted2023/11/21 11:00
井端弘和監督の下でアジア制覇を成し遂げた若き侍ジャパン。ただしライバル国も進境が著しそうだ
遊撃の広島・小園海斗は3試合で6安打の荒稼ぎ、攻守に活躍した。また巨人の門脇誠は、8番、9番で5安打、チャンスの起点になった。遊撃のポジションを小園に譲ったが、二塁の守備も堅実だった。日本ハムの万波中世は、第2戦の韓国戦で、バックスクリーン左に突き刺さるソロ本塁打。圧倒的な身体能力を見せつけた。
打線は残塁が多かったために繋がりはよくなかったが、投手陣が抜群だったので危なげはなかった。結局、決勝前の時点で、日本の失点は韓国戦で、クローザーとして連投したヤクルトの田口が金揮執に浴びたホームラン1本だった。
侍打線をほぼ完璧に抑えた台湾の23歳右腕とは
ただ、この3試合で対戦国にも光る選手たちがいた。
日本を驚かせたのが初戦の台湾戦、6回1死まで侍打線をパーフェクトに抑えた古林叡煬だ。古林は台湾プロ野球(CPBL)の統一ライオンズに所属する23歳の右腕である。5年目だが彼も今年5勝2敗、防御率1.80と心境著しいところを見せている。奪三振はわずか2つだが内野ゴロが9つ。制球ミスがほとんどなかった。森下に一発を打たれて負け投手になったが、この試合でぐっと注目度が上がったはずだ。
台湾は今年のWBCで対戦はなく、国際大会では2019年プレミア12以来だ。筆者はコロナ禍前まで、CPBLの試合をほぼ毎年観戦してきたが、以前は投手力が弱く、極端な打高だった。日本ハムにやってきた王柏融は打率4割、三冠王を記録していたが、CPBLのレベルを考えれば「但し書き」をつけたくなったものだ。古林叡煬の登場は、CPBLの投手力の進化を象徴している。
そして守備でも成長が見えた。少し前までは遊撃に飛んだ無理目の打球は捕るのが精いっぱいで見劣りがした。しかし今大会では遊撃の張政禹がたびたびスーパープレーを見せた。守備でも明らかに進化の跡が見えた。
CPBLは過去に何度も「野球賭博」「八百長」事件を起こしてきた。台湾の優秀なアマ選手はNPBやMLBに進むのが常だった。ヤンキースのエース王建民、NPBの陽岱剛などがその代表格だが、近年は政府も支援し大手企業も参入したこともあって信用を回復、チーム数も4球団から6球団に増えてレベルが上がっているのだ。
韓国、オーストラリアも力をつけていた
韓国は、今春のWBCでは日本戦に35歳の金廣鉉を先発させるなど、新鮮味に乏しかったが、今大会では、起亜タイガースの若きエース李義理、今季の本塁打王ハンファの盧施煥など新しい力が台頭している。そして今回の韓国は試合をするたびにチームとしての結束が強くなっていった印象があった。