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なでしこジャパンが“W杯優勝前の完敗”で痛感した「持ち味の守備が上手くいってなかった」問題…FW安藤梢と永里優季はどう対応したか

posted2023/08/09 17:34

 
なでしこジャパンが“W杯優勝前の完敗”で痛感した「持ち味の守備が上手くいってなかった」問題…FW安藤梢と永里優季はどう対応したか<Number Web> photograph by DPA/JIJI PRESS

女子W杯ドイツ大会メキシコ戦の日本スタメン。(上段左から)澤穂希、安藤梢、熊谷紗希、阪口夢穂、海堀あゆみ、永里優季。(下段左から)岩清水梓、宮間あや、近賀ゆかり、大野忍、鮫島彩

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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DPA/JIJI PRESS

2011年、なでしこジャパンがW杯優勝を成し遂げた際、FWとして数字以上に大きな貢献を見せた永里優季と安藤梢。その葛藤と栄光までを描いた記事「<なでしこインサイドレポート> 苦悩する2人のFW。 ~永里優季と安藤梢~」を特別に全文公開します。【初出:Sports Graphic Number784号(2011年8月3日発売)】※肩書きや時系列などは掲載時のまま(全2回の1回目/#2も)

 日本に土がついた唯一の試合は、FWがもっともボールに触れることの出来なかった試合だった。

 イングランドとの第3戦――。すでにグループリーグ突破を決めていた日本は、この試合に勝ち、決勝トーナメントの戦いに弾みをつけようとしていた。

 だが、思惑は外れた。パスが通らない。ルーズボールは奪われる。前線からの守備が機能しない。選手たちの動きも鈍かった。

 後半に持ち直したとはいえ、前後半に1点ずつとられて0-2の完敗。過去2戦の相手とのレベルの違いを痛感することになった。

 明らかになったのは守備の問題だった。前半を終えてベンチへ下がる途中、チームの中心であるMF宮間あやがFW永里優季を呼び止め、険しい表情で話しかけた。

「ボランチ(のパスコース)を完全に切って欲しい」

 ゴールを最優先に考えて、相手のボランチとセンターバックの間にポジションをとる永里に対しての要求だった。

永里は宮間の要求を理解しつつ「別のこと」を考えていた

 守備の中でファーストディフェンダーが決まらないと、後ろのポジションが決まらない。

 サッカーを知り尽くした宮間は、この時点で、前線にくすぶる問題点に気がついていた。

 永里とて宮間の指摘は理解していたが、頭の中では別のことを考えていた。

「ウチは、点をとりたいから、CBにもボランチにもいけるポジションをとっていたのに……。ハーフタイムは失点のことばっかり話し合っていて。どうやって点をとるかという話し合いにはなっていなかった」

 攻撃でも浮き彫りになった問題がある。組織が整備されて、個の当たりが強いチームと対戦したときに、いかにしてボールをつないでいくのか。

 特に酷かったのは、前半の攻撃だった。

【次ページ】 安藤は縁の下の力持ちとしてチームを支えていた

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