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井上尚弥のカウンターは「まるで将棋のように…」鉄壁ボクサー川島郭志が語る“ナオヤの超才能”「実はディフェンス、ピカイチですよ」
text by
赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph byNaoya Sanuki/Kiichi Matsumoto
posted2023/07/23 17:02
井上尚弥の衝撃KO劇を導く戦慄のカウンターについて、川島敦志に解説してもらった
「それは、自分も相手のパンチをもらう可能性があるから、井上が一瞬よけながら、身体をちょっと止めたためです。だから、ストレートが当たったところがテンプルになった。でも、そこはうまく距離とタイミングを調整していたと思う。ああいうカウンターが決まる瞬間は、数センチ、いや、数ミリの世界ですから。そういうリスクを回避しながら相手を倒したという意味で、最善のカウンターだったと言っていい」
いまは攻撃主体だけど、アウトボクサーにもなれたはず
それほど鋭いカウンターを打てるのも、井上に類い稀なディフェンスの技術があるからこそだろう。そんな井上の「目に見えない力」について、川島はこう強調する。
「相手のパンチをヒョッヒョッヒョッと、頭を動かしたりスウェーしたりして避けていると、相手は嫌になるものなんですよ。あんまりパンチが当たらないものだから、あれ? 俺の間合いじゃないんじゃないかって勘違いしちゃう。そうやって、相手の間合いを殺すのが僕の作戦でした。井上もディフェンスはピカイチですよ。いまは攻撃主体だけど、距離を取って戦うアウトボクサーにもなれたはずです。そういうスタイルでも、井上ならかなり上手いボクシングを見せてくれたでしょうね」
川島郭志(かわしま・ひろし)
1970年3月27日、徳島県生まれ。インターハイ優勝を経て'88年にプロデビュー。'94年WBC世界ジュニアバンタム級王座獲得。'97年に7度目の防衛戦でペニャロサに判定負けを喫し、現役を引退。引退後は都内でジムを経営、後進育成にあたる。24戦20勝(14KO)3敗1分。
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