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エディー・ジョーンズ電撃解任の余波…やはりリミットは「4年」なのか?「明朝までに仕上げて欲しい」周囲を疲弊させた“ハードな宿題” 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byItaru Chiba

posted2022/12/16 17:27

エディー・ジョーンズ電撃解任の余波…やはりリミットは「4年」なのか?「明朝までに仕上げて欲しい」周囲を疲弊させた“ハードな宿題”<Number Web> photograph by Itaru Chiba

ラグビー界に衝撃が走った名将エディー・ジョーンズの解任劇。来年のW杯で日本と対戦するイングランドの決断は吉と出るか

 今回の解任劇を見るにつけ、私が感じるのは、エディーさんは、つくづく「非常時の指揮官」だということだ。

 危機に陥っているチームを預かると、短期間で驚くほどの成果を出すのだ。

 W杯で1勝しか挙げたことがなかった弱小国、日本を引き上げた。

 そして2015年、W杯で日本が南アフリカを破ったあと、エディーさんはスーパーラグビーで南アフリカのケープタウンに本拠地を置くストーマーズのヘッドコーチに就任し、実際に赴任した。しかし急転直下、わずか8日間でイングランド代表のヘッドコーチへの就任が発表された。

 当時、イングランドは地元開催のW杯でグループステージ敗退という屈辱を味わったばかりだった。つまり、イングランド協会は大恥をかいた。もう、背に腹は代えられない。それまでイングランド代表のヘッドコーチは、すべてイングランド人が務めていたが、オーストラリア出身のエディーさんに白羽の矢が立った。

「成功したチームは、混沌に陥らせた方がいい」

 成功は予測できた。組織の欠陥、あるいは弱点を発見し、それを修正するのはエディーさんの最も得意とするところだからだ。就任直後のシックスネーションズでは5戦全勝で「グランドスラム」を達成、翌年も連覇した。

 しかし、私がもっとも印象的だったのは、2018年にシックスネーションズで5位に沈んだこと。ところが、その後にエディーさんに話を聞くと、「それも計算のうち」と余裕綽々だった。

「成功したチームは、いったん混沌に陥らせた方がいいんです」

 成功は停滞を生むという。あえて混沌を巻き起こし、そこから破壊、そして新しい創造が生まれる。

 そしてそのプランは、2019年のW杯で結実した。準決勝でニュージーランドに完勝。「エディー傑作選」を選ぶとするなら、2003年のW杯準決勝のオーストラリア対ニュージーランド、2015年の日本対南アフリカ、そして2019年のこの試合は必ず入る。

 もしも、決勝で南アフリカに勝っていたら……今回の解任劇も避けられたのではないか。

 蜜月が長く続かないのも、非常時の監督の常である。

【次ページ】 真の意味での「後ろ盾」がいなかった

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