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最も偉大なチャンピオンは誰? フェルスタッペンが更新した年間最多勝利「15」を勝率で考えたら… 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool

posted2022/12/09 11:00

最も偉大なチャンピオンは誰? フェルスタッペンが更新した年間最多勝利「15」を勝率で考えたら…<Number Web> photograph by Getty Images / Red Bull Content Pool

2022年の最終戦アブダビGPに勝利し、年間15勝を達成したフェルスタッペン

 フェルスタッペンは、この2人の元王者が打ち立てた大記録を更新した。

 第18戦日本GPで12勝目を挙げて最多勝記録にあと1つと迫っていたフェルスタッペンは、第19戦アメリカGPで13勝目を挙げて偉大な記録に肩を並べると、続く第20戦メキシコGPも連勝し、新記録を樹立した。14勝目を挙げたフェルスタッペンは最終戦アブダビGPでも勝利し、自身の記録を15勝に伸ばしてシーズンを終えた。

 シューマッハとベッテルという偉大な王者たちが保持してきた年間最多勝記録を今年、塗り替えたフェルスタッペン。9年前に13勝という当時の金字塔を打ち立てたベッテルも「この記録を破るのは、決して簡単なことではなかったと思う」と、自身の経験を振り返りながら、新記録を達成したフェルスタッペンを素直に祝福していた。

いまだ破られないシューマッハの勝率

 だが、この数字でさえ、永遠の記録とはならないだろう。父親が18年間保持してきた記録が更新されたレースに、同じF1ドライバーとしてハースから参戦していたミック・シューマッハは、こう語った。

「レース数が増えていけば、この記録はまた破られるに違いない。F1はこの18年でレース数が増加した。今後、レースが年間25戦に増えたら、また新しい記録が生まれるかもしれないだろう」

 ミックが指摘するように、2004年にシューマッハが13勝を挙げたとき、レースは年間で18戦だった。ベッテルの13勝も年間19戦というシーズン。それが2016年以降は新型コロナの影響を初めて受けた2020年を除いて、年間20戦以上となり、記録を更新した2022年は、前年同様、史上最多タイの全22戦で行われていた。

 とはいえ、シューマッハは2012年限りで引退。ベッテルも2022年をもって、F1の世界を去った。フェルスタッペンに塗り替えられた記録を取り戻すチャンスは、2人にはもうない。しかし、シューマッハとベッテルには、まだフェルスタッペンに破られていない記録が残っていた。それは、年間最高勝率だ。

 22戦で15勝したフェルスタッペンの年間勝率は68.1%。これに対して、19戦中13勝したベッテルは68.4%、18戦中13勝したシューマッハは72.2%だった。つまりフェルスタッペンがふたりを完全に凌駕するためには、あと1勝が必要だったことになる。

 2022年のフェルスタッペンの強さを思い返すと同時に、あらためてシューマッハとベッテルの偉大さを実感する。記録はいつか破られるものだが、3人のチャンピオンの偉大さはファンの記憶に永遠に刻まれることだろう。

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