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「大谷翔平はリーグ屈指の投手」マリナーズ監督も脱帽…投球を丸裸にする“屈指のデータ分析陣”にも負けなかった“投手オオタニの奥深さ”
posted2022/09/22 17:02
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
今に始まったことではないが、大谷翔平という野球選手は、我々が予想する世界の遥か上をいつも行く。
創造性、知性、センス、体力、技術、実行力。いずれも頭抜けた才を持ち、誰もがどこかで抱えている劣等感などは微塵も感じられない。自分をまっすぐに信じる力を持ち、ひたすらに努力、準備ができる。だから物事は好転し、異彩を放つことが許される。
マメとの闘いも…マリナーズに二塁さえ踏ませなかった
1918年にベーブ・ルースが達成した“W二桁”である「13勝&11本塁打」の13勝目に並んだ17日のマリナーズ戦の投球も予想を上回るパフォーマンスだった。
「投げながら、(右手中指の)マメの管理もしながらだったので、きょうは違うところも、そこも含めて集中しないといけなかったので、ちょっと特殊でしたけど、上手く終われたのかなと思っています」
今や、投手・大谷の唯一の弱点とも思われる右手中指のマメ。昨季も開幕直後に2週間以上に渡り登板間隔が空いたことがあった。今回も状態が危惧され、報道陣はフィル・ネビン監督代行やマイク・フロースタッドトレーナーに連日のようにマメの状態を確認していた。しかし、彼らは判で押したように同じ言葉を繰り返していた。
「状態はいい。問題はない」
この言葉を鵜呑みにしていた記者はおそらくほとんどいなかった。万全でなかったことは先の大谷の言葉からも窺える。それでも彼は7回3安打無失点、8奪三振。ポストシーズン進出圏内のマリナーズに二塁さえ踏ませなかった。
大谷本人が明かした「球種の選択」
配球チャートを見れば変化は一目瞭然だった。12勝目を挙げた10日のアストロズ戦では39%を直球とツーシームが占めた。いわゆる速球系だ。しかし、今回は19%にとどめた。その一方で前回はわずか3%(2球)に過ぎなかったスプリットが15%(16球)へと増え、スライダーは35%から51%へと上昇した。理由を大谷はこう説明した。
「スピードボールは、指の負担というか、しっかり土台ができている指じゃないとなかなか多く投げられないので、きょうはそこまで多く(スピードボールを)投げられる状態ではなかった」