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大阪桐蔭・西谷監督は根尾昂をどう評価していた?「時間のかかる選手」と語った真意 他球団では“高卒ショートの長期育成”が進むが…
posted2022/07/06 11:03
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
KYODO
彼の噂は高校入学以前の秋からすでにあった。
2015年の神宮大会でのことだ。
その噂とは、当時、近畿大会を制覇して同大会に出場していた大阪桐蔭に絡むものだった。
「岐阜の逸材を大阪桐蔭が強奪したらしい」
「両親が医師で、本人も医者志望なのに、西谷が無理に口説き落とした」
「中学3年で146キロを投げる逸材。でも、桐蔭は打者として採るらしい」
大阪桐蔭を長年取材している筆者に事実確認をしてくる人もいた。
今、何かと話題になっている中日・根尾昂はそれほど話題の選手だったのだ。
高校時代から変わらない“西谷監督の根尾評”
その神宮大会中、西谷浩一監督と話す機会があり「また、妬まれてますよ」と直撃したところ、こんな話になった。
「根尾のことでしょう。うちに来ますよ。(中学生で)146キロを投げたといって評判になってますよね。球速ばかりが先行して可哀想だなと思います。スピードだけが魅力のタイプではないですし、野手としての魅力もあります。僕のイメージとしては松井稼頭央さん。もちろん、手元に置いて見てみないと分かりませんけど」
もちろん、強奪したという事実はない。
確かに根尾の両親は診療所で勤務しているが、根尾自身は高校進学の時点で「プロ野球選手が目標」だった。西谷が根尾の視察に本腰を入れたのもその事実を知ったからで、「医者志望というのなら諦めるつもりだった」とのちに話している。
1年夏からベンチ入りさせたが、西谷は「育つのに時間がかかる選手」というのが当時から、そして、今も持つ根尾の印象だ。
事実、高校1年秋から外野と内野の併用だった。1学年上に上手い遊撃手がいたこともあるが、外野守備では早い段階で目処が立った。
もちろん、遊撃手としても、時に日本人離れした派手なプレーを見せることもあった。高校1年秋の近畿大会では、三遊間のゴロに追いついた後、反転してセカンドを刺した。2年春のセンバツでも、二遊間のゴロをさばいて、メジャーリーガーばりのランニングスローやジャンピングスローを見せている。