SCORE CARDBACK NUMBER
「パリ五輪に向けてのステップとして…」東京五輪で自己ベスト連発・廣中璃梨佳21歳から感じる“主役の貫禄”
posted2022/06/06 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Yuki Suenaga
胸に秘めたファイティングスピリットを100%、レースに投影できる選手だ。7月のオレゴン世界選手権代表選考会を兼ねた陸上の日本選手権女子1万mが5月7日に国立競技場で行なわれ、昨夏の東京五輪女子1万mで日本人として25年ぶりとなる7位入賞を果たした廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が31分30秒34で連覇を達成。作戦通りの冷静なレース運びから最後は強さの際立つ走りへとギアチェンジし、スタンドの観衆をしびれさせた。
スタートから先頭で引っ張る五島莉乃の後ろにピタリとついた。本来なら先頭を行くのが廣中のスタイルだが、貧血などで万全の準備ができなかったため、自重した。
「優勝ではなく、(世界選手権代表内定条件の)3位以内を確実に狙っていった。前半余裕を持って、後半上げていくというプランだった」
ADVERTISEMENT
7000mで前へ出ると、ラスト1周はさらにギアアップ。競り合っていた萩谷楓をみるみる引き離す圧巻のスパートを見せた。注目の不破聖衣来(拓大)が欠場となる中、主役の貫禄を見せつけた。
「パリ五輪に向けてのステップ」
東京五輪で5000mの予選(14分55秒87)、同決勝(14分52秒84)、1万m決勝(31分00秒71)とすべてで自己ベストを出したが、激走の代償で左膝に痛みが出た。昨年11月の全日本実業団対抗女子駅伝と今年1月の全国都道府県対抗女子駅伝ではいずれも区間賞の走りを見せ、中学3年生から始まった主要駅伝の「無敗神話」を継続したが、冬から春にかけて思うような練習ができなかった。今回は本番2週間前から急ピッチの仕上げ。それでも、今季初戦とは思えない走りを見せた。
無観客だった東京五輪では聞こえなかった拍手に背中を押された。7000mの給水時や7600mでトレードマークの帽子を脱ぎ捨てた時に聞こえたスタンドのどよめきも力になった。廣中は東京五輪で世界選手権の参加標準記録(31分25秒00)を突破しており、これにて代表に内定。6月12日には5000mでも日本選手権連覇を狙う。
「東京五輪と同様に、自分らしい走りをしたい。パリ五輪に向けてのステップとして、日本ではできないレース展開で揉まれながら、世界でどこまで目標に近づけるか」
21歳の成長は止まらない。