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「大谷翔平は6月に最も活躍する」 過去データから予測される“打撃成績の急激な上昇”がスゴい…“最強バッター”トラウトに並べるか?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2022/05/29 17:03
今季ここまでは9本塁打などの打撃成績を収めている大谷翔平
8月7日に31歳になるトラウトが、大きな故障なく元気に活躍していたのは、当時20歳の彼がア・リーグ新人王&MVP投票2位となった2012年から、今の大谷と同じ27歳で3度目のア・リーグMVPを獲得した2019年まで。その8年間の彼の出塁率は驚異の.422だった。
トラウトは「8年間」の最後の3年間(2017年から2019年まで)で、OPS1.000以上を保っているが、その内訳は出塁率が.438~.460、長打率が.628~.645と凄まじい数字を残している。OPSも1.071~1.088で、それが「最強打者」になる必須条件であることが分かる。
今季ここまでのOPSは自身ワースト2位だが…
大谷は23歳でメジャーデビューして以来、出塁率は昨季の.372が最高で、平均.350とトラウトのレベルには達していない。否定形を使ったのでネガティブな響きに聞こえるだろうが、これはトラウトが凄すぎるだけの話だ。大谷の出塁率は昨季のメジャー平均の.317を大きく上回っており、彼もまた、「凄い」レベルにあるのに、彼自身はそのさらに上、つまり「出塁率4割&長打率6割=OPS10割」を目指しているのである。
たとえば昨季、大谷に2本差をつけて48本塁打で本塁打王となったウラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ)の同年のOPSは1.002(出塁率.401+長打率.601)と、大谷の言う「理想」を満たしていた。昨季ナ・リーグMVPとなったブライス・ハーパー(フィリーズ)はゲレーロJr.以上で、OPS1.044(出塁率.429+長打率.615)だった。
大谷の現在のOPS.778(出塁率.319+長打率.459)は、彼にとってキャリア最低だった2020年の.657に次ぐワースト記録だ。同年は2018年オフの右肘のトミー・ジョン(側副靱帯再建)手術、2019年に左の二分膝蓋骨の手術を経て、新型コロナウイルスの感染拡大で60試合に大幅短縮されたシーズンの影響を受けているので、今の成績はある意味、意外な感じがする。
打撃低調はMLB全体の「良くないトレンド」
ただし、打撃が低調なのは大谷だけではなく、今季のMLB全体の「良くないトレンド」でもある。
たとえば米スポーツ局ESPNが伝えるところによると、4月の平均4.0得点は1981年以来最低、昨季と比較しても0.26得点低かったそうだ。4月の平均打率.231はMLB史上最低、出塁率.675は「投高打低」だった1968年以来の最低だったという。
指名打者制度がナ・リーグにも導入されたのに、全体的な打撃成績が下がっているというのは驚きだが、詳細な数字が掲載されているMLB公式サイトBaseball savantでも、時速100マイルの「飛び出し速度」と20度から35度の「飛び出し角度」で本塁打になるケースが(2015年から)昨季までの59%から47%へ減少したとか、飛距離が399.6フィートから394.6フィートまで短くなったとか、実際に残された数字によって打撃の低調が裏付けられている。
全30球団統一で公式球を専用の機械によって湿度管理するようになったことが原因と見られているようだが、実は大谷自身も使用球について米メディアにこう答えている。