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「佐々木朗希とは次元も時代も違いますよね」「試合後、田口壮がホテルで正座を」野田浩司が明かす“1試合19Kの舞台ウラ” 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2022/05/15 17:01

「佐々木朗希とは次元も時代も違いますよね」「試合後、田口壮がホテルで正座を」野田浩司が明かす“1試合19Kの舞台ウラ”<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

野田浩司と佐々木朗希。1試合最多「19奪三振」の記録保持者だ

 やはり佐々木朗希と同様、「特別の感覚」があったわけだ。

なぜ田口はエレベーターホールで正座していた?

 試合は8回までオリックスが1対0でリードするという接戦だった。

「僕はランナーをかなり出してます。ただ追い込んだらフォークを投げればなんとかなる感覚はありました。17という数字は意識していたので、並んだところで“とりあえずもう1個とりたいな、その上で1対0で勝ちたいな”と思ったんですが、18個目を取った後で9回に追いつかれた。走者一塁で中前にライナーが飛んで、それをセンターの田口壮が突っ込んで逸らして一塁走者が帰ってきた。そのあとは敬遠・敬遠で満塁策にして最後は19個目の三振を取ったんです。マウンドを降りてから山田コーチに“この試合、僕に下さい”と頼んだんですが、仰木監督の判断で10回は平井正史が救援で出て負けました。

 それでもプロ野球記録ということで試合後に記者会見をして、チームから遅れてホテルに帰ったら田口壮がホテルのエレベーターホールで正座して待ってました。“申し訳ないです”、“やめろ、どんだけいつも助けてくれてんねん”みたいなやりとりをしたのを覚えています。あの頃のオリックスの外野はイチロー、田口、本西厚博って、すごい顔ぶれで、いつも助けてもらっていましたから」

 野田浩司は96年8勝、97年も7勝を挙げたものの翌年から急速に衰え、2000年限りで引退する。「100勝できなかった悔いはめちゃくちゃありますね。95年くらいの調子なら150くらい勝つ自信ありましたからね」と、心底悔しそうな顔をした。その表情に「投手」という生き物の心理を覗き見た気がした。

佐々木朗希はちょっと次元も時代も違いますよね

 最後に、13日の登板で今季4勝目を挙げた佐々木朗希についてはどう見ているのか。

「ちょっと次元も時代も違いますよね。パーフェクトの次の8回で降りた試合は、ボールがばらついてシュート回転して、前の試合よりは少し調子が悪いのかなと思いましたけど、個人的には“投げろよ”と思いましたね(笑)。2試合連続完全試合なんて今後100年、200年でないかもしれない。9回投げて、登録抹消して2週間明けて出ればいいと思うんです。ただそのあたりは、昔との考え方の違いを感じますが。

 何より佐々木朗希の活躍で、思い出してもらえるのはありがたいです。彼には太く長く活躍してほしいですね」

 座っている間は気が付かなかったが、取材を終えて、筆者を見送るために立ち上がった野田浩司はびっくりするほど大きかった。

「そうだ、野田浩司って足が長くてスタイル抜群だったな」

 そんなことも思い出す、楽しいインタビューだった。<前編からつづく>

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