炎の一筆入魂BACK NUMBER
「三者凡退でもダメな球がある」首位カープのブルペンを支える元守護神・中崎翔太29歳の復活の軌跡と栗林良吏も見習う“姿勢”とは
posted2022/04/12 06:02
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Sankei Shimbun
セ・リーグのペナントレースは各球団が連勝、連敗を繰り返すジェットコースターのようなスタートとなった。開幕前は決して下馬評が高くなかった広島は開幕6連勝から3連敗、その後は1敗1分けを挟んで4勝とアップダウンを経て、10勝4敗1分けでリーグ首位に立つ好発進を決めた(4月10日時点、数字は以下同様)。
カブスへ移籍した鈴木誠也が抜けた野手陣の奮闘も目立つが、安定した戦いを支えているのはチーム防御率2.34の投手陣だろう。フレッシュな顔ぶれがそろう中継ぎの中で、8月には30歳を迎える中崎翔太がセットアッパーに定着し、両リーグ最多タイの8試合に登板している。
20代前半から守護神を任され、3連覇を支えた。3年連続胴上げ投手は、1973年までの高橋一三(巨人)以来45年ぶり。15年から4年間で計257試合に登板して、105セーブをマークした。
登板過多による勤続疲労からか優勝を逃した19年は抑えの座を譲り、シーズン途中に二軍降格。オフには右膝半月板部分切除手術を受けた。20年9月には右後上腕回旋動脈瘤切除の手術。リハビリ後も思うように状態が上向かず、昨年は12年以降で自己最少の4試合登板。2年連続で一桁登板の停滞感を打ち破ろうと、あらがい続けた。
昨年11月、秋季練習では二軍から招集されて紅白戦に登板した。一軍首脳陣への品評会のようなマウンドで、かつての守護神が躍動した。時折小雨が降る寒空の中、紅白戦登板で150kmを計測するなど、無失点投球の好結果を残した。
“復活”を印象付ける投球で、今春一軍キャンプ参加が決まった。「最後だと思って思い切りやれれば」という覚悟で臨み、勝ちパターン入りして22年の開幕を迎えた。
コツコツと微調整を実らせての復調
「久々に一軍の舞台で投げさせてもらっている。ここ2、3年はなかったですからね。(しびれる場面を)思い出した感じはありますが、より新鮮な気持ちで取り組めているかなと思います」
抑えとして最終回に備えていた時代とは違い、今年は8回を主に試合展開を見ながら準備しなければいけない。開幕から接戦の試合展開が続くだけに、登板数には表れない疲労もあるだろう。
抑えとは違う、難しさもある。負担も異なる。ただ、久しぶりに味わう一軍での緊張感が心地いい。
「いつ呼ばれてもいいようにしっかりやっていますし、僕自身もそうですけど、ほかのリリーフ陣も毎日俺が投げる、勝ちたい、投げたいという気持ちでやっているので、僕も負けないように。しがみついてやれているかなと思います」
若手に混じり、新たな気持ちでシーズンを過ごしている。見事なまでの復活劇だが、中崎自身は“復活”という表現に抵抗感を覚えている。