格闘技PRESSBACK NUMBER
“プロレス大賞新人賞”SKE48荒井優希に「足りないもの」とは? 伊藤麻希が語ったリアルな評価「スター性も根性もある。でも…」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/03/27 17:04
3月19日に両国国技館で行われた東京女子プロレス。SKE48の荒井優希は、伊藤麻希が持つ「インターナショナル・プリンセス王座」のベルトに挑戦した
この試合後、伊藤には「お前は弱い! でも、弱くても闘う姿に勇気をもらえたやつがいっぱいいたと思う。お前はSKE48の荒井優希じゃねえ、プロレスラーの荒井優希だ!」と言葉をかけられたが、それは伊藤がかつての自分に叫んでいるようにも見えた。弱くても立ち上がって向かっていく、という愚直な戦いは、かつて彼女自身が通った道だ。
2016年にプロレスラーとしてデビューした伊藤は、福岡のアイドルグループLinQをクビになったことをきっかけに本格的にプロレスを主戦場とした。当初は元LinQやクビドルという言葉がついてくることが多かったが、今やプロレスラー伊藤麻希についている二つ名は“新時代のカリスマ”だ。
「素材はいいけど、料理人としては…」の真意
実は冒頭の「素材としては~」という言葉も、かつて伊藤自身が言われたものだ。
2018年1月4日、伊藤は男色ディーノとシングルマッチを戦い、掟破りのリップロックでファーストキスを失いながらも敗戦。すると、勝ったディーノが「素材としては~」とコメントを残して去っていった。注目を集める存在であり、プロレスと真剣に向き合って力をつけてもいる。努力だけではどうにもならないこともある注目度と、努力で確実に成長していく力量。そのどちらも備えていながら、プロレスラーとして足りないものがある。
それが何なのかを伊藤が理解したのは、偶然にも荒井の存在があったからだった。
アイドルとしてアイアンマンヘビーメタル級のベルトを持った荒井がDDTに参戦した2018年10月28日、ベルトを奪取した伊藤は「(ディーノの)そのコメントの意味が、今日とても分かった」と漏らした。「(荒井は)まあまあよかったと思う。レスラーと比べたら全然だけど。でも、もっとおいしくさせることが出来たならよかったのかなとも思います」と語り、結果としてその意識がプロレスラーとしてのステージを上げることになった。
そして迎えた今年の3月19日、2人は両国国技館という大舞台でシングル王座を賭けて戦うことになった。
初のタイトルマッチとなる荒井は場外戦でペースを握られたが、ビッグブーツやボディスラム、そして決め技のFinally(かかと落とし)で反撃。しかし、伊藤がまたしても差を見せつけた。食らいつく荒井を雪崩式DDTから伊藤デラックスでギブアップさせ、王座を防衛。「素材としてはいいけど、料理人としてはまだまだ」とコメントしてみせた。