「中学で150キロ投げたっていっても、軟式でのことだし、実際にその頃の森木を見てないので。なるべく“無視”するようにしてるんですが、どうしても頭をよぎるじゃないですか。もしかして、“超”の付く早熟なのかもしれない…って、ずっと見てきたんですけど、それはないですね。早熟は150キロ投げられないですよ。そこまで行く前に、成長止まるでしょ。勝ち運みたいなもんがないっていうのは、森木本人もわかってるはずです。勝とうとすれば、もっと変化球使うはずなのに、この春の森木は、そこへ逃げなかった。県大会でも四国（大会）でも、これでもか！ってストレートで攻めていた。ああいう真っすぐさっていうか、頑固さがいいんですよ、プロには」

「僕はまだ信用してないね」

　森木大智の評価を上げたスカウトが多かった中で、こんな意見もあった。

「大騒ぎされて高校に入って、1年の最初から何度も見てるけど、さすが森木！ってピッチングに出会ったの、今回が初めて。確かに、器の大きさは認めるけど、持っている能力をフルに発揮するのも“能力”だからね。素質はすごいんだけど、実戦で発揮できなくてねって言われ方されながら消えていった選手、何人もいるでしょ。ドラフトの上のほうで入って、下（ファーム）で何年も投げてるのって、そういうピッチャーたちでしょ。ほんとにいいピッチャーなら、試合に投げたって、いつもいいですよ。僕はまだ、信用してないね」

　未完の大器が、ようやくその片鱗を見せ始めて、大輪の華を開花させる兆しを感じさせた。

　まず、そこまでは、間違いない。この先、チームからも、見守り続ける人たちからも、さらに揺るぎない信頼を獲得できるか否かは、森木本人の「この先」にすべてがかかっている。

　その全力投球を受けた者からの「えこひいき」も込めて、私は「やれる！」と確信している。

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