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3人のプロ野球スカウト「ウチに入れば、左投手でトップクラス」“ドラ1候補”西日本工業大・隅田知一郎、ドラフト直前の本音を聞いた
posted2021/10/07 17:04
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
「この春に、コロナで練習自粛になった時に、まずちょっとガッカリしたんですけど、ちょっと待てよって思って、これは何か新しいことをする時間をもらったと考えたとしたら……」
ここまでの話の切り出し方で、今日の相手は、ちょっとモノが違うぞ、と思った。今日の取材は面白くなるな……そんな予感が胸をよぎった。
西日本工業大・隅田知一郎投手(177cm76kg・左投左打・波佐見高)。
九州・福岡市より大分県境に近い西日本工業大。主に福岡県の都市部以外にある大学が所属する「九州地区大学野球連盟」で、宿敵を日本文理大に定めて戦ってきた。
「せっかくそれだけ時間があるなら、新しい球種を覚えようと。それも、自分でちゃんと制御できる変化球でないと意味がないですから」
この日、ブルペンで披露してくれたピッチング。
コロナで練習自粛になった間に自ら開発して身につけたツーシームとチェンジアップに、スライダー、カーブにスプリット。50球ほど、すべての球種を投げてくれて、抜けたり、ショートバウンドしたり、投げ損じの変化球が1球もなかった。
今年6月、ドラフト戦線のトップランナーに
隅田が「全国」の舞台に躍り出たのは、今年6月の全日本大学野球選手権。
その初戦で、強豪・上武大と対戦した。
全国屈指の強打線を向こうにまわして一歩も退かず、0対1で惜敗したものの、わずか4安打に抑えて14三振を奪い、一気にドラフト戦線のトップランナーの位置についた。
「自粛期間に覚えたツーシームとチェンジアップが効きました。やっといてよかったなぁって、しみじみ思いましたね。災い転じて福となす……ですか。考え方ひとつじゃないですか、なんでも」
しかし、たった1球の失投を、上武大の4番・ブライト健太中堅手に神宮球場の左中間中段まで持っていかれ、それがこの試合唯一の失点となっていた。
「強打者って聞いてましたから、最初から内角の速球勝負って決めてました。上武大の4番に、自分のストレートがどれぐらい通用するのか。プロでの可能性も、その結果で見えてくるかな……と思ってましたから」