オリンピックへの道BACK NUMBER
「水泳の聖地」辰巳国際水泳場がアイスリンクに! 年間赤字1億円超え見込みでも25年開業を目指すわけ<フィギュアに朗報>
posted2021/09/26 17:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
KYODO
東京五輪・パラリンピックを機にさまざまな競技施設が新設された。大会を終えた今、新施設や歴史ある既存の施設のあり方はどのようなものになっていくのだろうか。
転換点を迎える既存の施設の1つに辰巳国際水泳場がある。1993年に開業し、競泳の日本選手権をはじめ、アーティスティックスイミングなどの数々の大会が行なわれてきた「水泳の聖地」は、東京五輪では水球の会場として使用された。
ただ、オリンピックの競泳、飛込、アーティスティックスイミング、パラリンピックの水泳の会場として東京アクアティクスセンターが新設されたことから、辰巳国際水泳場は大会後、アイスリンクに改修することが2019年3月に発表されていた。
五輪が終わり、9月21日には辰巳国際水泳場の中間計画が発表された。それを踏まえ、改修と転用の意味、課題を考えてみたい。
中間計画では「東京辰巳アイスアリーナ」(仮称)は2025年の開業を予定し、1年間を通して氷上スポーツのために使用できる「通年リンク」であるとする。大会の開催のほか、日頃から氷上スポーツを楽しめる場にすることを想定している。また有明アリーナと連携して国際大会開催も盛り込まれている。
この計画は、かねてからの“ある課題”を克服する可能性の1つとなり得ることを意味する。
それは、フィギュアスケートにおいてリンクが不足しているという課題だ。
全スケーターの積年の課題
新たにオープンするリンクがある一方で閉鎖されるリンクがあり、そこを拠点としているスケーターの滑る場所が失われ、移る先を見つけるのも容易ではないことが問題となってきた。東京都の場合、連盟に登録している選手数は、2018年には1500人を超えたが、これは2007年当時の2倍以上となっている。近年、子どもたちのあこがれの選手のアンケートで羽生結弦などフィギュアスケート選手の名前があがってきたことが示すように、スケートをしたいと思う子どもの数が増えている。しかし、リンクが増えないことで、クラブに入りたくても入れないという競技にとって貴重な機会の損失が起きているのだ。