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《金メダル》元エースピッチャーが掴んだ“初代王者”「バドミントンは高1から」梶原大暉(19)シャトルを打つ動作とフライを捕る感覚は似てる?
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/09/05 11:30
今大会から採用されたバドミントンで見事、メダルを獲得した鈴木亜弥子(中央)と梶原大暉(右)。大会前に稲垣吾郎と語っていた「共通点」とは?
稲垣 ピッチングはボールを外に払うように、腕を内旋させて投げるんだよね。腕が硬い人は外旋しちゃうって、ゴルフで教えてもらいました(笑)。ゴルフも、肘から下を柔らかく使うのが大事なので。
梶原 投球では手のひらが体の内側に向いていると怪我につながるので、外へ弾く感覚は意識していました。
鈴木 バドミントンだと、上から腕を外旋させて打つことも多いです。でも状況に応じて、ラケットの面をわざと外に向けてシャトルの回転を変えたりもします。内外の打ち分けもテクニックのひとつですね。
稲垣 そうやって打ち方にバリエーションをつけられるということは、やっぱりみなさん肘の下が柔らかいんでしょうね。他に野球の動作が役に立ったことはありますか?
梶原 コーチからは、「フライを捕るときの空間を把握する力が活きてるんじゃない?」と言われます。
鈴木 あー、わかる気がする。
稲垣 確かにフライの捕球は難しそうだな。距離感とか、なかなかイメージが湧きません。でもそう考えると、バドミントンにはスムーズに馴染めたんじゃないですか。
梶原 いやいや、ほとんどやったことがなかったのもあって、こんなに難しいんだと驚きました。車椅子も、初めて競技用に乗ったときは動きが良すぎて制御ができなくて。見学もさせてもらったんですが、本当に車椅子に乗ってるのかなと思うぐらいスピードを出すんです。自分にできるのかなと不安でしたね。
鈴木は「2手先」、梶原は「勘」
鈴木 地元で始めたの?
梶原 はい。福岡にパラバドミントンのチームがあって、偶然家からも近かったのでそこで教えてもらいました。始めたての頃はラケットにシャトルが当たらないし、当たっても飛ばないし……。
稲垣 バットに120キロとか130キロのボールを当てるのとはまた違うんですか?
梶原 全然勝手が違います。あと、戦略を考えるのは今でも難しいですね。
稲垣 シャトルの滞空時間も結構長いから、考えることも多そうです。ラリーがどう続くかも、数手先まで読んでいたりするんですか?
鈴木 私は自分が打ったところから数えて2手先ぐらいまでですね。
梶原 僕は読みというより、勘に頼っている部分が大きい気がします。
稲垣 梶原選手がバドミントンを始めたのが2017年。そこからメキメキと頭角を現し、日本選手権は19年から2連覇中です。飛躍のきっかけは何だったのでしょう。
梶原 一番大きいのは、18年に国際大会デビューを果たして、世界のトップ選手を間近で見れたことですね。自分はまだまだだなと気が引き締まりましたし、それと同時に打ち方や車椅子の動かし方、戦略などを生で見て感じられたのが良かったです。
稲垣 実際に戦ったんですか。
梶原 はい。あと、世界選手権を4連覇している韓国のキム・ジョンジュン選手が決勝戦に残っていた大会では、その試合をずーっと見ていました。
稲垣 それは強敵ですね! 東京大会が延期になったのは残念でしたが、そういったライバルとの差を縮めるチャンスだと考える選手もいます。
梶原 僕もそう思います。去年の時点では世界トップの選手にはまだ届かないと思っていたので、準備の期間ができたという点ではプラスに捉えられています。