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「いつだって震えている」ロッテ田村龍弘は”信頼”をどう積み重ねてきたのか? キャッチャーという過酷な仕事のウラ側
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/14 11:02
3月28日、プロ初登板となった鈴木昭汰(左)に声をかける田村龍弘。今年で27歳、今や若手投手に頼られる場面も増えてきた
ペナントレースはオリンピック中断期間を経て後半戦に突入した。パ・リーグは混戦。前半戦以上の重圧が捕手にはのしかかる。捕手陣は球場入りしてミーティング。全体練習後にバッテリーミーティングと野手ミーティング。試合後にミーティングとどのポジションよりもタイトなスケジュールの中で戦う。
「大変だけど、やりがいがある。勝った時、捕手は誰よりも充実感を感じられるし嬉しい」と田村は痺れながらもマスクを被り続ける。
19歳で一軍デビューし、今や27歳。気が付けば自分より若い投手も増えた。後輩たちのデビュー戦でリードを任されることも多い。そういう時は不敵な笑みを浮かべながら話しかける。
「緊張してマウンドで顔面蒼白なピッチャーもいる。強がってでも、こっちは『大丈夫や』と自信満々に言う。内心はボクも緊張しているけど、こっちも一緒になって顔を真っ青にしていたらダメだし、投手も不安になるのでね」
ベテラン陣が自分自身のリードを信じて投げて勝つ試合も嬉しいが、若い投手たちをリードして彼らが飛躍のキッカケを掴んでくれることの充実感にも、やりがいを感じる。捕手は難しい。しかし日々のすべてが刺激的で充実している。
「益田さんに突っ込んでいきます」
苦難を乗り越えた先に見える光景はもちろんリーグ優勝だ。マリーンズは1974年以来、パ1位でのリーグ優勝から遠ざかっている。これまで何度となく目の前で胴上げを見てきた悔しい想いがある。そしていつかは自分自身が胴上げの輪の中心で喜べることを信じて努力を続けてきた。
「その瞬間、右手を突き上げます。そしてマウンドにいる抑えの益田さんのところに突っ込んでいきます」と目を輝かせる。田村を信頼する益田も「腰が砕けるぐらい田村に飛びつきます」と笑う。
143試合の激闘の先にある最高の瞬間を夢見て捕手は日々、重圧と向き合い努力を重ねている。