甲子園の風BACK NUMBER
「女が野球なんて」意識はどう変わったか 「女子も甲子園」継続のカギは女子高野連が抱える“アマチュアリズムを逸した行為”
text by
飯沼素子Motoko Iinuma
photograph byMotoko Iinuma
posted2021/06/09 17:02
女子児童の全国大会での入場行進。この大会は女子野球界に大きな影響を与えた
「女子も含めて野球の振興に力を尽くすべき」
こうした変化を高野連の田名部はひしひしと感じていた。
「個人的には、どこかの時点で協力すべきことはやらねばならないと思ってきました」
そして2020年、今がその時かもしれないと思った田名部は、4月の業務運営委員会で以下のように話したという。
「男子野球人口が急激に減っている今、男子だけでなく、女子も合わせたすべてのカテゴリーで野球の振興に力を尽くすべきなのではないか。IOCなど、世界のスポーツ団体も男女平等を推進している。女子の競技人口が増えているなかで、その高校時代を我々が支援できないか。女子の決勝を甲子園でという声もある」
委員たちは黙って聞いていたという。
高野連女子部創設の可能性はあるのだろうか
ようやく女子の支援に踏み出した高野連。その意義を同連盟は、
「双方の連盟が協力、連携して決勝を甲子園で開催することは、両連盟にとっても、野球界全体にとっても有益です」
と言う。しかし決勝を甲子園でやることが高校女子野球の最終目標ではないはずだ。求められているのは、そこから先の女子野球の環境整備だが、これについては、
「今回の取り組みは初めてのことであり、両連盟で決勝を実施したうえで、課題等を話し合います。また今後も、別々の歴史を歩んできた両連盟の精神、理念やルールの確認をし、今後の高校野球の普及、振興に向けて意見を交換し、協力、実現できるものについては検討していきます」
と答えるに留まった。
ただ、同連盟に登録する女子野球部員1万1914名(2020年度、マネージャーふくむ)については、原則として他の野球連盟との二重登録はできないとしながらも、女子野球連盟が主催する大会に出場できないか、協議していくとのことだった。
では高野連が長く「時期尚早」としてきた女子部創設の可能性はあるのだろうか。言い換えれば「支援」ではなく、高野連自らが女子の育成に乗り出す可能性である。
高野連は「当連盟はこれまで男女混合ではなく、男子は男子、女子は女子で公式戦に出場し、活躍の機会を確保するという考えでやってきました」と言い、それであれば現行の規定を改め、男子部と女子部をもつ高校野球の統括団体に変わることができそうだが。
しかし、これについての回答は得られなかった。