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サッカーだけじゃない…国民的マンガ『#名探偵コナン』が“スポーツ愛に溢れている”と言える「4つのポイント」 

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松尾奈々絵(マンガナイト)

松尾奈々絵(マンガナイト)Nanae Matsuo

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photograph byJIJI PRESS

posted2021/04/16 17:00

サッカーだけじゃない…国民的マンガ『#名探偵コナン』が“スポーツ愛に溢れている”と言える「4つのポイント」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

本日より公開が始まる、映画「名探偵コナン 緋色の弾丸」も事件の舞台は“スポーツの祭典”だ

 家族を利用され、組織から抜け出し「裏切り者」とされた灰原は、境遇が似ている比護選手に自分を重ねる。そして、アウェイの状態の中でゴールを決め、ブーイングの届かない場所(スペインへの移籍を噂されていた)に行くのではなく、その場で戦う比護選手を応援するようになるのだ。

 サッカーのルールすらよく知らない灰原だったが、選手のファンになって、サッカーにも興味を持ち始める。その後は比護選手とアイドルの沖野ヨーコが熱愛中というゴシップニュースにショックを受けたり、比護選手のストラップを落として放心状態になったりするなど、以前の灰原だったら考えられなかったような顔を見られるようになった。

 試合やプレー内容に感動したわけではなく、選手の事情や背景から興味を持ち、そこからそのスポーツ自体に興味を持つ。そんなよくいる普通のスポーツファンの一面を見せたことで、「灰原哀」というキャラクターはより人間味のある魅力的な存在になっている。

その2)事件の舞台に「甲子園」も登場していた

 作者の青山剛昌先生は、『名探偵コナン』が連載される前、1991年から93年まで不定期で『4番サード』という野球マンガを描いていた。主人公は、長嶋茂雄と同姓同名の長島茂雄、高校2年生。同姓同名というだけで、サード四番打者に選ばれてしまうが、期待に応えられずに三振ばかり。ある日、沢村栄治からお金を使った分ヒットが打てるという「神様(ベーブルース)からの特別なバット」をもらい、ヒットが打てるようになる。

『まじっく快斗』の怪盗キッドのように、作品のクロスオーバーが多い青山作品だが、この『4番サード』と繋がるエピソードが『名探偵コナン』コミックス43、44巻に収録されている。甲子園にやってきたコナンや服部平次たちが観戦していたのが、高校3年生になった長島がいる港南高校と、彼のライバルである稲尾一久が投げる大金高校が対戦している試合だった。

 この回では、コナンと平次が甲子園のスタンドで爆弾を使って自殺することを示唆する犯人を捕まえるために奔走するのだが、その一方で試合も盛り上がりを見せて、港南高校が長島のホームランで大金高校に追いつき、試合は延長戦へ突入する。『4番サード』の時にはチームメイトに心を開いていなかった稲尾の変化や「ベーブルースの記念碑」が謎に関わっているなど、『4番サード』ファン必見のエピソードにもなっているのだ。

 何より、このエピソードが伝える「甲子園は品評会じゃない」「勝つか負けるかの戦場だ」という言葉は野球ファンに熱く響く言葉だろう。多くの甲子園ファン、野球ファンに伝えたいメッセージだ。

【次ページ】 新一と蘭の名場面にも「あるスポーツ」が

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