4戦無敗、期待の21歳女子格闘家・平田樹に青木真也が「俺は褒めないから」と伝えたワケ

「プロレスは“勝った負けた”だけの世界ではない。敗者にも光が当たり、そこにドラマがある」

　選手だけでなくメディアの人間がそう言う（書く）こともある。確かにそれはプロレスの魅力だ。しかしプロレスだけの魅力ではない。あらゆるスポーツには“敗者のドラマ”がある。

　キックボクシングやMMAにも“勝った負けた”以上の試合をしようとリスクを背負って攻める選手がいる。逆に勝ち負けにこだわるプロレスラーも多い。あるレスラーから「タイトルマッチで相手がアクシデントで怪我をした結果、僕が勝ったとしても勝ちは勝ち。僕は喜んでベルトを巻きますよ」という言葉を聞いたこともある。

「爪痕を残した選手」に選ばれた敗者

　日本MMAのトップランナー、かつDDTで硬軟自在のプロレスを披露している青木真也は、こうした部分への意識も強い。2月22日に開催された『Road to ONE:4th』からも、それが分かった。

　この大会で、青木は生中継の解説を担当している。彼が長く主戦場としているONE Championshipの日本版スピンオフ大会。今回は『YOUNG GUNS』というサブタイトルがついていた。“5年後の主役たち”をテーマに、若い選手たちをフィーチャーしたイベントだった。

　メインイベントに登場したのは21歳の平田樹。ABEMAのリアリティ番組『格闘代理戦争』のトーナメントで優勝し、アマチュアから即、国際大会であるONEと契約という異色の経歴を持つ。プロデビュー後は3連勝。「ガキには、未来しかない」という今大会のキャッチコピーも、もともとは平田の言葉だ。

　平田は中村未来と対戦し、2ラウンドTKO勝ちを収めた。しかし青木は「爪痕を残した選手」に賞金とともに贈られる〈NEXT YOUNG GUNS AWARD〉に、敗れた中村を選んでいる。

【次ページ】　勝利した平田に笑顔がなかったのは