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「1時間以上眠れない」過酷さ… 地球4周目に向かう53歳白石康次郎に訊く“海上2000時間”の孤独とは
posted2020/11/07 20:00
text by
占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph by
AFLO
あなたは白石康次郎をご存じでしょうか。
ヨットで地球を3周した海洋冒険家。サッカー界の“キング・カズ”三浦知良と同じ53歳。最も過酷とも言われ、4年に一度開催される単独無寄港無補給の世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」に再挑戦する。11月8日にフランスをスタートし、約2000時間(約80日)を掛けて完走すればアジア人初。だが、数々の記録、数字、偉業よりも、伝えたいものがある。
「そりゃ世界一にはなりたいよ。でも、それは目的じゃない。手段だからね。『世の中を明るく元気にしたい』。それが一番の目的。今回は完走が目標。最高峰のレースで世界一周したヨットを日本に持って帰って、みなさんに見てもらいたいから」
おじさんが白い歯を見せ、キッズのようなコロコロした笑い声を上げて言う。
「おまえたちは何でもできるよ」
コロナ禍、東京五輪延期、自死の増加……。閉塞感に覆われた2020年だからこそ、文字どおり命を懸けて地球と“遊ぶ”男が発する純度100%の言葉に思わず耳を傾けたくなる。そこには摩訶不思議なワクワクとドキドキが待っている。たった1人、港にも寄らず、船に積んだだけの食料で臨む世界4周目に向けて実感を込めて言った。
「30年前、ここまでできるって言ってくれる人は1人もいなかったよ。だから、若い人たちには『おまえたちは何でもできるよ』って声をかけてあげる。自分自身で証明できたから言えるよね。今、ネガティブな発言をする大人が多い。『思ったように生きたら人生悪くなる』って間違ったことを教える。『好きなことやって好きなように生きればいいんだよ』ってね。どうなるかって? オレみたいな大人になる(笑)」