エデルの名言 

EURO2016決勝、下馬評を覆して勝ち上がってきたポルトガルだったが、いきなり窮地に立たされる。クリスティアーノ・ロナウドが前半8分に接触プレーで負傷。一度はピッチに戻ったものの、わずか25分で交代。万事休す――無念の涙を流しながら担架に乗るキャプテンの姿を見て誰もがそう思った。しかし、仲間たちは諦めなかった。フランスの豪華アタッカー陣の攻撃をことごとく防ぎ、隙あらばカウンターから相手ゴールを脅かす。一進一退の攻防は延長戦までもつれた。負傷交代後、監督さながらの大きなジェスチャーと声で鼓舞し続けたロナウドが、最後に自分の思い託したのは途中出場のFWエデルだった。109分、相手DFに囲まれながら強引に持ち込み、ゴール左隅に突き刺すミドルシュート。死闘を制したのは、絶対的エースを欠いたポルトガルだった。悲願達成の瞬間、大粒の涙を流したロナウド。その強い思いが仲間たちを突き動かしたのだ。

Number906号(2016/07/14)