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ノンスタ石田が語る漫才と競技化(3)
和牛が作った型、笑い飯の天才性。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2020/01/21 18:10
漫才の構造や系譜を解説しながら、自分も舞台に立つ。NON STYLEというコンビもまた、難しいことに挑戦しているのだ。
笑い飯はベタをベタじゃなく見せる天才。
――M-1王者になった人たちが全員、革新的な漫才をやったというわけではないですもんね。
石田「基本、ベタな方がウケるんですよ。『ミスターM-1』とでも呼ぶべき笑い飯さんも、発想とセンスの塊みたいに思われてますけど、じつはベタなんです。ベタをベタじゃなく見せる天才なんで。そもそもベタをできない人は、お笑いに向いてないですからね」
――笑い飯がベタだというのは、どういうことなんですか。
石田「たとえばなんですけど、哲夫さんが『行列ができてる店とかで列に割り込んでくるやつおるやろ。ああいうやつを注意したいねん』って振ったとして、西田(幸治)さんが哲夫さんの後ろにスッて入って『前に入れや!』とやる。めちゃくちゃベタじゃないですか。
でも前後でちょいちょい変なワードを入れたりしているからベタが目立たない。今や伝説となっている、島田紳助さんが100点を付けた『鳥人』というネタも設定はぶっ飛んでますけど、つなぎ粉はベタベタですから。哲夫さんもベタ大好きな人ですしね」
漫才は定義した瞬間に置いていかれる。
――石田さんは、漫才を定義することはできますか。
石田「定義があるとしても、年々変わってますからね。和牛という芸人が登場したことによって、ボケが1人で表現できひんことをツッコミが協力して表現するという手法が生まれました。今、それを使ってる漫才師が増えましたよね。
今回のM-1決勝に出場したからし蓮根もそうでしたよね。教習所のネタで最後、生徒役のボケの子が、ツッコミ役の教官の子を後ろから車でひくシーンがありました。ぶつかった瞬間、教官の膝がカックンと折れる。あそこで笑いを取ってましたけど、これまでの漫才の教科書だと、すかさず『なにひいてんねん!』が正解なんですよ。でも1回、ツッコミもボケに加担してるでしょう。ああいうパターンが増えた。
M-1が登場してから漫才の変化のスピードが急激に速まった。これが漫才だって定義してしまったら、あっという間についていけなくなっちゃいますよ」