「谷間の世代」と呼ばれて。BACK NUMBER
「まだまだ谷間の世代は終わらない」
阿部勇樹38歳、笑顔で語れる理由。
text by
浅田真樹Masaki Asada
photograph byYuki Suenaga
posted2019/10/10 11:30
優しい瞳の奥に備えた戦術眼。南アフリカW杯、ジェフ、レッズで輝いた阿部勇樹は今もなおJ1のピッチに立つ。
「まだまだ谷間の世代は終わらない」
2007年に千葉から浦和レッズへと移籍した阿部は、途中、レスター・シティで過ごした2シーズンを挟み、今も浦和でプレーを続けている。谷間の世代としては、今では数少ないJ1所属の選手である。
「だいぶ(同年代の選手が)減ってきて、寂しいは寂しいですよね。だけど、大輔やコマちゃんなんかも頑張っているし、彼らが頑張るなら、その活躍に負けないように自分も頑張って、彼らにいい刺激を与えられるように。そういった関係でいたいなと思います」
阿部ははっきり「谷間って呼ばれ方はあまり好きじゃない」と口にするが、しかし、そう言われてきたからこその連帯感があり、それがピッチに立つ原動力になっていたとも感じている。
「最後には見返してやろうぜって思うヤツが多かったし、そう思いながら、みんなで一緒に進んできた。今となっては、笑って『谷間の世代って呼ばれてたよね』って言える、お互いがなくてはならない存在です」
阿部も再来年には、いよいよ不惑の年を迎える。同志が次々にスパイクを脱いでいくなか、谷間の世代を巡る物語は、間もなくエピローグを迎えようとしているのだろうか。
「でも、もう現役を辞めて、セカンドキャリアで他のことをやっている選手もいるけど、そういう人からも僕は刺激をもらっていきたい。一緒にサッカーをやって切磋琢磨して、という関係性ではないけれど、まだその延長線上にあるのかなとは思っているんで。どんな道に進んだとしても、谷間の世代が頑張っているって言えるようにしていきたいですね」
そして一呼吸置くと、阿部はニッコリと笑って言った。
「まだまだ谷間の世代は終わらない。そう思っています」