酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
近本光司が更新した今こそ称える、
新人・長嶋茂雄153安打の偉大さ。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2019/09/21 09:00
セ新人安打記録を更新し、阪神の顔となった近本光司。ただ試合数と安打数を比べてみると、長嶋茂雄の偉大さが見えてくる。
レギュラーを守った源田、近本。
2017年の源田は愛知学院大、トヨタ自動車からドラフト3位で西武に入団。開幕から9番遊撃でスタメンで出場し、4、5月と打撃好調で2番を打つようになる。6~8月とやや不振だったが9月に盛り返し、フル出場を果たした。
2019年の近本は、関西学院大、大阪ガスを経てドラフト1位で阪神に。オープン戦では65打数17安打、打率.262。同じく59打数22安打、打率.373の成績を残したドラフト3位の木浪聖也とともに開幕スタメンを果たし、木浪が1番、近本が2番という並びだった。
開幕後は、素晴らしい出足。6月に大スランプに陥ったが立ち直り、オールスターにも出場してサイクル安打という派手な記録を打ち立てて、MVPを獲得した。ここまで1試合欠場しただけ。盗塁数でもヤクルトの山田哲人を抜いて1位に立っている。
3人とは異質な長嶋のスタッツ。
ここまでの3人は、リードオフマンタイプだが、長嶋茂雄は違う。立教大学時代に東京六大学の本塁打記録を作って鳴り物入りで巨人に入団した。
開幕戦で国鉄・金田正一に4打席4三振を喫し、そのショックからか4月の打率こそ.238だったが、以後、猛打を見せた。
最終的に長嶋が残した数字は、以下の通り。
130試合502打数153安打
29本塁打92打点37盗塁、打率.305
安打、本塁打、打点でリーグ1位。打率は2位。もし打率が1位なら新人で三冠王という破天荒な記録だった。さらにあと1本ホームランを打っていたら、新人でのトリプルスリーも記録していた。
なお長嶋はこの年、ベースの踏み忘れで本塁打を1本損している。これは結果的に球史に残る大チョンボだったといえよう。
安打数では長嶋は4位だが、新人選手としての実績では他の3人とスケールが違うという感じだ。